里道の近くに居住し、その通行による利便を享受することができる者であつても、当該里道の用途廃止により各方面への交通が妨げられるなどその生活に著しい支障が生ずるような特段の事情があるといえないときは、右用途廃止処分の取消しを求めるにつき原告適格を有しない。
里道の近くに居住する者が当該里道の用途廃止処分の取消しを求めるにつき原告適格を有しないとされた事例
行政事件訴訟法9条,国有財産法3条2項2号,建設省所管国有財産取扱規則17条
判旨
里道の用途廃止処分の取消しを求める訴えにおいて、当該里道が原告に個別的具体的な利益をもたらし、その廃止により生活に著しい支障が生ずるという特段の事情がない限り、原告適格は認められない。
問題の所在(論点)
行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益を有する者」の意義、及び里道の用途廃止処分の取消訴訟における近隣住民の原告適格の有無。
規範
行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。公有物(里道)の利用に関する一般住民の利益は、原則として反射的利益にすぎないが、当該公有物が特定の者に個別的具体的な利益をもたらしており、その廃止によって生活に著しい支障が生じるなどの「特段の事情」が認められる場合には、法律上保護された利益として原告適格が認められる。
重要事実
上告人は、行政庁によってなされた本件里道の用途廃止処分の取り消しを求めて提訴した。上告人は、当該里道の利用が自己の生活にとって重要であり、処分の取消しを求めるにつき原告適格を有すると主張したが、原審は当該里道が上告人に個別具体的な利益をもたらしている等の事情を否定し、訴えを却下した。これに対し、上告人が最高裁に上告した事案である。
事件番号: 昭和57(行ツ)83 / 裁判年月日: 昭和58年9月6日 / 結論: 破棄自判
農地法五条所定の許可がされた農地上に建物が築造されることにより右農地に隣接する農地の日照、通風等が阻害されて農作物の収穫が激減し、その農地としての効用が失われるおそれがあるとしても、右隣接農地の所有者は、右許可の取消しを求める原告適格を有しない。
あてはめ
本件において、里道が上告人に対して個別的具体的な利益をもたらしている事実は認められない。また、本件里道の用途廃止によって、上告人の生活に著しい支障が生ずるという「特段の事情」も認められない。したがって、上告人が本件処分によって侵害される利益は、法律上保護された利益ではなく、単なる反射的利益にとどまるものと解される。
結論
上告人は本件用途廃止処分の取消しを求めるにつき原告適格を有しない。したがって、本件訴えを却下した原審の判断は正当である。
実務上の射程
公物法関連の原告適格に関する重要判例。一般住民の公物利用権を原則として反射的利益としつつ、個別具体的な利益の有無と生活への支障の程度(著しい支障)を考慮要素として「特段の事情」を構成する判断枠組みは、実務上、道路や水路等の用途廃止における適格判断の基準として広く活用される。
事件番号: 昭和36(オ)629 / 裁判年月日: 昭和37年2月15日 / 結論: 棄却
第一審判決が確認の利益のないことをもつて訴を不適法として却下したが、仮定的に本案について認定判断をも判示している場合において、控訴審が確認の利益があり訴は適法であるけれども請求は理由がないと判断するときには、控訴審として、民訴法第三八八条により事件を第一審に差し戻さなくてもよい。
事件番号: 昭和60(行ツ)140 / 裁判年月日: 昭和62年7月16日 / 結論: 棄却
土地改良区の地区内の農用地が土地改良事業施行中に非農用地化した場合にも、そのことのみから当然に土地改良法六六条にいう「事業により利益を受けないことが明らかになつた場合」に該当すると解すべきではなく、当該土地について土地改良事業による利便の増進がみられるか否かを個別に検討してその該当性を判断すべきである。
事件番号: 昭和61(行ツ)173 / 裁判年月日: 昭和62年9月22日 / 結論: 棄却
都市計画法一一条一項一号の道路に関する都市計画の変更決定は、抗告訴訟の対象とならない。
事件番号: 昭和41(行ツ)34 / 裁判年月日: 昭和47年7月25日 / 結論: 破棄差戻
一、建築基準法四二条一項五号により位置の指定を受けた道路の廃止処分につき、敷地の所有者の承諾がなかつたとしても、右所有者において道路が従前よりは狭くなる程度のことを承知のうえで廃止申請書添付の図面に押印したという判示の事情があるときは、その承諾の欠缺が申請関係書類上明白であるのにこれを看過してされたというような特別の場…