土地改良区の地区内の農用地が土地改良事業施行中に非農用地化した場合にも、そのことのみから当然に土地改良法六六条にいう「事業により利益を受けないことが明らかになつた場合」に該当すると解すべきではなく、当該土地について土地改良事業による利便の増進がみられるか否かを個別に検討してその該当性を判断すべきである。
土地改良区の地区内の農用地が土地改良事業施行中に非農用地化した場合と土地改良法六六条にいう「事業により利益を受けないことが明らかになつた場合」
土地改良法66条
判旨
土地改良法66条の「事業により利益を受けないことが明らかになつた場合」とは、農用地としての効用増進に限らず、事業施行前後の状況を比較して何らかの利便の増進が認められるか否かで判断すべきである。したがって、農地転用により非農用地となったことのみをもって、当然に地区から除外すべき場合には当たらない。
問題の所在(論点)
土地改良事業の施行中に農用地から非農用地へ転用された土地について、土地改良法66条に規定される「事業により利益を受けないことが明らかになつた場合」に該当し、当然に地区から除外されるべきか。また、その際の「利益」をどのように解すべきか。
規範
1. 土地改良区が、宅地等の非農用地をその地区に編入することは法律上許容される。2. 土地改良法66条(旧法も同様)にいう「事業により利益を受けないことが明らかになつた場合」の「利益」とは、必ずしも農用地としての効用の増進に限定されるものではなく、個々の事業ごとに施行前後の状況を比較して、当該土地について何らかの利便の増進がみられるならば、その存在を肯定すべきである。3. したがって、従前農用地であった土地が事業施行中に転用等により非農用地となった場合でも、当然に利益を受けなくなったと解することはできず、個別に利便の増進の有無を検討すべきである。
重要事実
事件番号: 昭和57(行ツ)83 / 裁判年月日: 昭和58年9月6日 / 結論: 破棄自判
農地法五条所定の許可がされた農地上に建物が築造されることにより右農地に隣接する農地の日照、通風等が阻害されて農作物の収穫が激減し、その農地としての効用が失われるおそれがあるとしても、右隣接農地の所有者は、右許可の取消しを求める原告適格を有しない。
土地改良区の地区内に所在し、当初は農用地として編入されていた土地について、土地改良事業の施行中に農地転用の許可を受けるなどして宅地等の非農用地となった。当該土地を譲り受けた上告人らは、非農用地となった以上は事業による利益を受けないことが明らかになったとして、土地改良法66条に基づき地区から除外されるべきであると主張して争った。
あてはめ
本件各土地は、農用地から宅地等の非農用地へとその性格を変更しているが、土地改良法は非農用地の編入を禁じておらず、むしろ非農用地が地区に含まれることを前提とした規定を置いている。事業による「利益」とは農地としての効用増進のみを指すものではなく、道路整備や区画整理等による利便性の向上も含まれる。本件において、農地転用がなされたという事実のみから直ちに事業による利便の増進が失われたとはいえず、個別検討の結果、依然として利便の増進が認められる以上は、同条の除外要件には該当しない。
結論
農地転用により非農用地となったことのみをもって「利益を受けないことが明らかになつた場合」に該当するとはいえず、地区除外は認められない。上告棄却。
実務上の射程
土地改良法上の「利益」を広範に捉える判旨であり、事業継続の安定性を重視している。答案上は、土地改良区の賦課金徴収の適法性や、地区除外申請の拒否処分の是非が問われる場面で、本件「利益」の定義を用いて、土地の現状(非農地化)のみに拘泥せず実質的な利便性(インフラ整備状況等)を考慮する規範として活用できる。
事件番号: 昭和62(行ツ)49 / 裁判年月日: 昭和62年11月24日 / 結論: 棄却
里道の近くに居住し、その通行による利便を享受することができる者であつても、当該里道の用途廃止により各方面への交通が妨げられるなどその生活に著しい支障が生ずるような特段の事情があるといえないときは、右用途廃止処分の取消しを求めるにつき原告適格を有しない。
事件番号: 昭和33(オ)406 / 裁判年月日: 昭和34年1月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地転用許可は、住居の安定等の諸利益を考慮した上で裁量権の逸脱がない限り適法であり、既に事実上転用された農地に対する許可も、将来に向けた違法状態の消滅という効果を有する以上、不能の行政処分として無効になることはない。 第1 事案の概要:上告人らが受けた農地法に基づく転用許可処分に対し、当該土地が既…
事件番号: 平成2(行ツ)153 / 裁判年月日: 平成4年1月24日 / 結論: 破棄自判
町営の土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合であっても、右事業の施行の認可の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。