判旨
農地転用許可は、住居の安定等の諸利益を考慮した上で裁量権の逸脱がない限り適法であり、既に事実上転用された農地に対する許可も、将来に向けた違法状態の消滅という効果を有する以上、不能の行政処分として無効になることはない。
問題の所在(論点)
1. 住居の安定等の諸利益を考慮してなされた農地転用許可処分に裁量権の逸脱があるか。2. 既に事実上転用された農地に対してなされる転用許可処分は、客観的に不能な行政処分として無効となるか。
規範
行政処分が裁量権の範囲を逸脱して違法となるのは、その内容が著しく不当で公正を欠く場合や、不正不当な動機に基づく場合に限られる。また、事後的な許可処分の有効性については、当該処分が将来に向かって違法状態を消滅させ、申請者に当該土地を農地以外の用途に使用する自由を得させる効果を有する限り、不能の行政処分とはならず有効である。
重要事実
上告人らが受けた農地法に基づく転用許可処分に対し、当該土地が既に事実上農地以外の用途に転用されていたことから、当該処分の有効性が争われた。原審は、当該許可が住居の安定という切実な希求を尊重しつつ利害関係者の利益も考慮したものであり、裁量の逸脱はないと判断した。これに対し、事実上転用済みの土地への許可は不能な処分であり無効であるとの主張がなされ、上告に至った。
あてはめ
本件許可処分は、住居の安定という申請者の切実な希求を尊重し、かつ上告人らの利害をも十分考慮した上でなされている。そのため、内容が著しく不当で公正を欠く、あるいは不正不当な動機に基づくといった事情は認められず、裁量権の範囲内である。また、既に事実上転用されている土地であっても、許可処分によって事後的に違法状態を消滅させ、将来に向かって農地以外としての使用権限を付与する法的効果が認められる。したがって、目的が達成できない不能な処分にはあたらない。
結論
本件許可処分に裁量権の逸脱・濫用は認められず、また事実上の転用後になされたことをもって無効となることもないため、本件上告を棄却する。
事件番号: 昭和57(行ツ)83 / 裁判年月日: 昭和58年9月6日 / 結論: 破棄自判
農地法五条所定の許可がされた農地上に建物が築造されることにより右農地に隣接する農地の日照、通風等が阻害されて農作物の収穫が激減し、その農地としての効用が失われるおそれがあるとしても、右隣接農地の所有者は、右許可の取消しを求める原告適格を有しない。
実務上の射程
農地法上の許可における行政庁の広範な裁量を認める。特に「追認的許可」の有効性を肯定した点に実務上の意義があり、違反状態の解消手段としての行政処分の法理を論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和32(オ)84 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 破棄差戻
休止期間経過前に期日指定申立書が提出された場合には、たとえ申立書に法定の印紙が貼用されていない場合でも、裁判所が民事訴訟用印紙法第一一条により印紙を貼用させるかどうかにつき考慮を払わないかぎり、休止満了の効果は確定的に生ずるに至つていないものと解すべきである。
事件番号: 昭和28(オ)451 / 裁判年月日: 昭和34年1月29日 / 結論: 棄却
同一土地につき二個の買収計画が並存することは相当でなく、両計画をともに取り消した上で新たに買収計画を定むべきであるとの理由で、町農業委員会の定めた農地買収計画を取り消す旨の訴願裁決があつた場合、町農業委員会が右趣旨に従い右土地につき再度買収計画を定めることは、訴願法第一六条に違反するものではない。
事件番号: 昭和30(オ)444 / 裁判年月日: 昭和33年2月7日 / 結論: 棄却
一 農地買収計画に関する異議、訴願を棄却する決定、裁決があつても、村農業委員会は原計画を取り消し得ないものではない。 二 農地買収計画に耕作されていない土地が含まれていても、その面積は数坪の僅少部分であつて、それ自体独立して価値のあるものと認め難いときは、右買収計画は違法といえない。
事件番号: 昭和29(オ)550 / 裁判年月日: 昭和31年4月13日 / 結論: 棄却
昭和二四年法律第二一五号による農地調整法改正前においても、同法第四条によつて市町村農地委員会が行う農地等の所有権、賃借権等の設定、移転等の承認は同委員会の自由な裁量に委せられていたものと解すべきでない。