買収農地が売り渡されたのちに農地法四条一項五号に規定する市街化区域内にある農地となつた場合には、右農地につき小作農として売渡しを受けるべき地位にあると主張する者は、右売渡処分の取消しを求める法律上の利益を有しない。
買収農地が売り渡されたのちに農地法四条一項五号に規定する市街化区域内にある農地となつた場合と右農地につき小作農として売渡しを受けるべき地位にあると主張する者が右売渡処分の取消しを求める法律上の利益
行政事件訴訟法9条,農地法36条1項,農地法80条
判旨
農地法に基づく売渡処分が取り消されたとしても、当該土地が市街化区域内農地となった場合には、再度売り渡される可能性がなくなるため、当該処分の取消しを求める法律上の利益は失われる。
問題の所在(論点)
農地法に基づく売渡処分の取消訴訟において、当該土地がその後の都市計画決定により市街化区域内農地となった場合、処分を取り消すことによって得られる「法律上の利益」(行政事件訴訟法9条1項)が認められるか。
規範
行政事件訴訟法9条1項にいう「法律上の利益」とは、当該処分が取り消されることによって、原告が受けている不利益が解消され、法的に保護された利益が回復し得る関係にあることをいう。処分が取り消されても、その後の法的状況の変化等により、原告が期待する法的効果を享受できる可能性が客観的に認められない場合には、訴えの利益は消滅する。
重要事実
本件は、国が行った農地の売渡処分(本件売渡処分)に対し、上告人がその取消しを求めた事案である。本件土地は、当該処分の後、都市計画決定によって農地法4条1項5号に規定する市街化区域内の農地となった。この結果、農地法36条1項に基づく農地の買収・売渡しの対象から外れることとなった。
事件番号: 昭和35(オ)1198 / 裁判年月日: 昭和37年7月20日 / 結論: 棄却
農業委員会が国の所有農地についてした売渡決議及び関係書類の知事への進達は、行政事件訴訟特例法にいう行政庁の処分ではない。
あてはめ
本件売渡処分が仮に取り消され、土地の所有権が一度国に復帰したとしても、本件土地は既に市街化区域内農地となっている。農地法36条1項は市街化区域外の農地を売渡しの対象としており、現在の法的位置付けに鑑みれば、国が再び上告人に対して当該土地を売り渡す法的可能性は消滅している。したがって、処分を取り消したとしても上告人の権利・利益が回復する余地はないといえる。
結論
上告人は本件売渡処分の取消しを求める法律上の利益を有せず、本件訴えは不適法である。
実務上の射程
処分の取消しによって得られる利益が事実上または法律上の変動により消滅した場合の「訴えの利益」の判断基準を示す。特に農地法関連の訴訟において、市街化区域への編入が原告適格(狭義の訴えの利益)に与える影響を判断する際の有力な先例となる。
事件番号: 昭和57(行ツ)83 / 裁判年月日: 昭和58年9月6日 / 結論: 破棄自判
農地法五条所定の許可がされた農地上に建物が築造されることにより右農地に隣接する農地の日照、通風等が阻害されて農作物の収穫が激減し、その農地としての効用が失われるおそれがあるとしても、右隣接農地の所有者は、右許可の取消しを求める原告適格を有しない。
事件番号: 昭和25(オ)160 / 裁判年月日: 昭和27年3月6日 / 結論: 棄却
市町村農地委員会の定めた農地の買収計画、売渡計画に対する都道府県農地委員会の承認は、民訴応急措置法第八条、自作農創設特別措置法第四七条の二、同法附則第七条、行政事件訴訟特例法等にいう行政庁の処分ということはできない。
事件番号: 昭和29(オ)550 / 裁判年月日: 昭和31年4月13日 / 結論: 棄却
昭和二四年法律第二一五号による農地調整法改正前においても、同法第四条によつて市町村農地委員会が行う農地等の所有権、賃借権等の設定、移転等の承認は同委員会の自由な裁量に委せられていたものと解すべきでない。
事件番号: 昭和42(行ツ)52 / 裁判年月日: 昭和46年1月20日 / 結論: その他
一、農地法施行令二八条が、自作農創設特別措置法三条による買収農地につき、農地法八〇条の認定をすることのできる場合を、農地法施行令」六条四号所定の場合に限ることとし、当該買収農地自体、社会的、経済的にみて、すでにその農地としての現況を将来にわたつて維持すべき意義を失い、近く農地以外のものとすることを相当とするもののような…