一、農地法施行令二八条が、自作農創設特別措置法三条による買収農地につき、農地法八〇条の認定をすることのできる場合を、農地法施行令」六条四号所定の場合に限ることとし、当該買収農地自体、社会的、経済的にみて、すでにその農地としての現況を将来にわたつて維持すべき意義を失い、近く農地以外のものとすることを相当とするもののような、明らかに農地法が売払いの対象として予定しているものにつき、同法八〇条の認定をすることができないとしたことは、法の委任をこえるもので、無効というべきである。 二、買収農地を自作農の創設等の目的に供しないことを相当とする事実が生じた場合には、その旧所有者は、農地法八〇条一項に基づく農林大臣の認定の有無にかかわらず、直接、農林大臣に対し当該土地の売払いを求めることができる。 三、農地法八〇条に基づく農林大臣の認定は行政庁の内部的な行為であり、また、同条に基づく売払いは私法上の行為であつて、いずれも行政訴訟の対象となる行政処分ではない。
一、農地法施行令一六条の法適合性 二、買収農地の旧所有者の農地法八〇条に基づく売払いを求める権利 三、農地法八〇条に基づく農林大臣の認定および売払いの性質
憲法73条6号,農地法80条,農地法施行令16条,行政事件訴訟法3条
判旨
買収農地が自作農創設等の目的に供しないことを相当とする客観的事実がある場合、旧所有者は農地法80条に基づき売払請求権を有し、当該農地の他者への売渡処分の取消しを求める法律上の利益(行政事件訴訟法9条)を有する。
問題の所在(論点)
買収農地の旧所有者は、当該農地が他者へ売渡処分された場合、その処分の取消しを求める原告適格(行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益」)を有するか。また、農地法80条に基づく売払いは行政処分か私法上の行為か。
規範
1. 収用目的が消滅した場合、被収用者に財産を回復する権利を保障することは立法政策上正当であり、農地法80条の売払制度も同趣旨である。2. 買収農地につき自作農創設等の目的に供しないことが相当という客観的事実があれば、農林大臣は旧所有者に売り払う義務を負い、旧所有者は売払いを求める私法上の権利を有する。3. この権利を有する旧所有者は、当該農地が他者へ売渡処分された場合、自己の権利行使を妨げられないために、当該処分の取消しを求める法律上の利益を有する。
事件番号: 昭和44(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和47年3月30日 / 結論: 棄却
農地法八〇条に基づき農地の被買収者が買収農地の売払いを求める訴訟においては、国を被告とすべきである。
重要事実
上告人(旧所有者)から国が買収した農地が、売渡処分のないまま土地区画整理事業の地区に編入された。その後、愛知県知事は当該土地を第三者に売渡処分した。上告人は、当該土地が農地法80条1項の「自作農創設等の目的に供しないことが相当と認められる」場合に該当するとして、第三者への売渡処分の取消しと、農林大臣への土地売払義務の確認を求めて提訴した。
あてはめ
農地法80条は、農地としての利用意義を失った場合に旧所有者への売戻しを義務付けている。本件土地が土地区画整理地区に編入され、客観的に自作農創設の目的から外れているならば、上告人は国に対し売払請求権を有する。農林大臣の認定は内部的な羈束行為であり独立の行政処分ではない。また、売払いは私法上の行為である。したがって、上告人は自己の売払請求権を保全するため、第三者への売渡処分を排除する法律上の利益が認められ、原告適格を有する。
結論
旧所有者は、本件売渡処分の取消しを求める原告適格を有する。原審が「認定がない限り原告適格がない」としたのは誤りであり、客観的状況を審理させるため差し戻すべきである。
実務上の射程
行政処分の取消訴訟における「法律上の利益」の有無を、処分の根拠法規が保護する私法上の権利関係から導き出す手法として重要。また、農地法80条の売払いを私法上の行為と断じ、民事訴訟(将来の給付の訴え等)の対象となることを示した点でも実務上の意義が大きい。
事件番号: 昭和34(オ)672 / 裁判年月日: 昭和36年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分を行った旨の通知が、それ自体として新たな権利義務の変動を生じさせる公権力の行使に当たる場合には、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。 第1 事案の概要:上告人(行政庁側)は、昭和23年に自作農創設特別措置法に基づき被上告人らに対して農地売渡計画を決定し、売渡通知書を交付した。しかし、昭…
事件番号: 昭和29(オ)550 / 裁判年月日: 昭和31年4月13日 / 結論: 棄却
昭和二四年法律第二一五号による農地調整法改正前においても、同法第四条によつて市町村農地委員会が行う農地等の所有権、賃借権等の設定、移転等の承認は同委員会の自由な裁量に委せられていたものと解すべきでない。
事件番号: 昭和46(行ツ)46 / 裁判年月日: 昭和47年12月12日 / 結論: 棄却
一、自作農創設特別措置法に基づき所有土地を買収された者が買収計画または買収処分に対する取消訴訟を提起しても、右土地につき売渡の相手方のために進行する取得時効は中断されない。 二、自作農創設特別措置法に基づき所有土地を買収された者は、右土地の売渡の相手方を被告として、買収計画または買収処分の取消を条件とする原状回復の請求…