私選弁護人が判決言渡期日として適法な呼出を受けながら右期日に出頭しない場合に、裁判所が国選弁護人を選任し、弁論を再開して事実の取調べをした上、判決言渡をしたとしても、右手続に違法があるとはいえない。
判決言渡期日として適法な呼出を受けた私選弁護人が右期日に出頭しない場合に、裁判所が国選弁護人を選任し弁論を再開して事実の取調をなし、判決を言い渡すことの適否。
刑訴法289条,刑訴法313条1項,刑訴法37条5号,刑訴規則216条1項
判旨
私選弁護人が適法な呼出しを受けながら判決言渡期日に出頭しない場合、裁判所が国選弁護人を選任して弁論再開・事実取調べを経て判決を言い渡す手続は、憲法及び刑事訴訟法に違反しない。
問題の所在(論点)
私選弁護人が判決言渡期日に出頭しない場合に、裁判所が国選弁護人を選任して弁論を再開し、事実取調べ等を経て判決を言い渡す手続が、弁護人依頼権(憲法37条3項)や適正手続(憲法31条)に反し、違法となるか。
規範
被告人の弁護を受ける権利を保障する観点から、弁護人の出頭は重視されるべきであるが、適法な呼出しを受けながら弁護人が正当な理由なく欠席し、訴訟の進行を遅延させる場合には、裁判所は訴訟経済と迅速な裁判の要請に基づき、国選弁護人を選任した上で必要な審理を行い、判決を言い渡すことができる。
重要事実
本件被告人の私選弁護人は、裁判所から判決言渡期日として適法な呼出しを受けていた。しかし、当該弁護人は指定された期日に出頭しなかった。これに対し裁判所は、弁論を再開した上で、職権により国選弁護人を選任した。その後、事実の取調べを行い、同日に判決の言渡しを行った。
あてはめ
私選弁護人が適法な呼出しを受けたにもかかわらず期日に出頭しないことは、特段の事情がない限り、弁護権の放棄または訴訟手続の遅延を招く行為といえる。このような状況下で、裁判所が被告人の防御権を形骸化させないよう国選弁護人を選任し、改めて弁論を再開して事実取調べという慎重な手続を経たことは、被告人の利益を保護しつつ迅速な裁判を図る合理的な措置である。したがって、当該手続に憲法・刑訴法違反の違法は認められない。
結論
私選弁護人の不出頭に際し、国選弁護人を選任して弁論再開・判決言渡を行う手続に違法はない。
実務上の射程
弁護人の欠席による訴訟の停滞に対する裁判所の裁量的対応を肯定する。特に実務上、弁護人がボイコット等により審理を拒否した場合において、国選弁護人の選任による審理進行の適法性を基礎づける根拠として重要である。
事件番号: 昭和37(あ)2433 / 裁判年月日: 昭和38年5月30日 / 結論: 棄却
所論は、公判期日において突然選任せられた国選弁護人はその職責を十分に尽すことができないので、かような弁護人の選任は憲法(第三七条第三項)の精神に反する旨を主張する。そして記録によると、昭和三七年九月一八日の原審第二回公判期日において、それまで被告人のために弁護活動をしてきた国選弁護人甲が欠席したため、原審裁判長は同日弁…
事件番号: 昭和44(あ)2182 / 裁判年月日: 昭和45年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】必要的弁護事件でない控訴審において、裁判所が被告人に弁護人選任の機会を十分に与えた上で、公判期日に職権で国選弁護人を選任した措置は、被告人の弁護人選任権(憲法37条3項)を侵害しない。 第1 事案の概要:被告人は、控訴趣意書提出期限の通知とともに弁護人選任の照会を受けた際、自ら選任する旨回答したが…