所論は、公判期日において突然選任せられた国選弁護人はその職責を十分に尽すことができないので、かような弁護人の選任は憲法(第三七条第三項)の精神に反する旨を主張する。そして記録によると、昭和三七年九月一八日の原審第二回公判期日において、それまで被告人のために弁護活動をしてきた国選弁護人甲が欠席したため、原審裁判長は同日弁護士乙を被告人のため国選弁護人に選任したのであるが、右公判期日においては裁判官がかわつたための更新手続と同年六月三〇日施行の検証調書と証人二名の各尋問調書の職権による証拠調が行なわれた。しかして、乙弁護人は異議なく職務を引き受け、被告人においても何等異議を述べた形跡のない本件においては、当該国選弁護人がその職責を十分に尽すことができなかつたような特別の事情を認めることはできないので、憲法違反の所論は前提を欠ぎ採用の限りでない。
公判期日における国選弁護人の選任と憲法第三七条第三項。
刑訴法289条,刑訴法290条,憲法37条3項
判旨
公判期日に選任された国選弁護人が直ちに弁護活動を行うことは、弁護人が異議なく職務を引き受け、被告人も異議を述べていない等の事情がある限り、直ちに憲法37条3項に反するものではない。
問題の所在(論点)
公判期日において突如選任された国選弁護人が、十分な準備期間なしに弁護活動を行うことが、憲法37条3項の精神に反し、実質的な弁護を受ける権利を侵害しないか。
規範
国選弁護人の選任及びその活動が憲法37条3項の保障する弁護人依頼権の趣旨に反するか否かは、当該弁護人がその職責を十分に果たすことができないような特別の事情があるか否かによって判断される。
重要事実
被告人のために活動していた国選弁護人Aが、原審第2回公判期日に欠席したため、裁判長は同日、新たに弁護士Bを国選弁護人に選任した。同期日では、裁判官交代に伴う更新手続、及び検証調書や証人2名の尋問調書の証拠調べが職権で行われた。弁護士Bは異議なく職務を引き受け、被告人も異議を述べなかった。
あてはめ
本件では、選任された弁護士Bが異議なく職務を引き受けており、被告人自身も何ら異議を述べていない。また、当該期日で行われた手続は更新手続や書面等の証拠調べであり、これらの状況を総合すると、当該弁護人がその職責を十分に尽くすことができなかったような「特別の事情」は認められない。
結論
公判期日における急遽の弁護人選任であっても、弁護活動に支障を来す特別の事情がない限り、憲法37条3項に違反しない。
実務上の射程
実質的弁護権の保障の限界を示す。公判手続の遅延回避と弁護権保障の調和の観点から、弁護人の応諾や被告人の異議の有無、当該期日の手続内容を考慮要素とする判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和36(あ)2207 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
私選弁護人が判決言渡期日として適法な呼出を受けながら右期日に出頭しない場合に、裁判所が国選弁護人を選任し、弁論を再開して事実の取調べをした上、判決言渡をしたとしても、右手続に違法があるとはいえない。