国選弁護人が付されている第一審において、判決宣告期日として指定告知された公判期日に、弁護人の出頭がないままで、弁論を再開し、書証の取調を行なつたのち、即日判決を宣告することは、事件がいわゆる必要的弁護事件でない場合でも、違法な措置というべきである。
任意弁護事件の第一審において判決宣告期日として指定告知された公判期日に国選弁護人の出頭がないままで弁論を再開し審理判決することは違法か
刑訴法36条,刑訴法273条3項,刑訴法289条1項,刑訴法293条2項,刑訴規則211条
判旨
必要的弁護事件でない場合でも、国選弁護人が付されている状況下で弁護人の欠席したまま弁論を再開し証拠調べを行うことは違法であるが、当該証拠を除外しても犯罪事実の認定が十分可能であれば、判決に影響を及ぼすべき法令違反には当たらない。
問題の所在(論点)
必要的弁護事件以外の事件において、弁護人が選任されているにもかかわらず、その欠席下で弁論を再開し証拠調べを行うことの適否、およびその違法が判決に影響を及ぼすか否か。
規範
必要的弁護事件(刑訴法289条1項)に該当しない事件であっても、現に弁護人が付されている場合には、弁護人の出頭なくして弁論を再開し、実質的な証拠調べ等の訴訟手続を進めることは、被告人の防御権を侵害するものとして訴訟手続上の違法となる。もっとも、当該違法が判決に影響を及ぼす(同法379条、411条1号)か否かは、当該手続で取り調べられた証拠を除外したとしても、他の適法な証拠によって罪体認定が可能であるかという観点から判断される。
重要事実
被告人Bは、必要的弁護事件ではない事件について第一審判決を受けた。第一審では当初から国選弁護人が付されていたが、裁判所は、一旦弁論を終結した後に判決宣告期日として指定した公判期日において、国選弁護人が出頭していないにもかかわらず弁論を再開した。その上で、新たな書証の取調べを実施し、即日弁論を終結して判決を宣告した。
あてはめ
第一審裁判所が、弁護人が出頭していないにもかかわらず弁論を再開し書証の取調べを行った措置は、訴訟手続の解釈を誤った違法なものである。しかし、第一審判決が認定した犯罪事実は、当該期日に取り調べられた書証を除外したとしても、その余の挙示された証拠のみによって十分に認定することができる。したがって、右の違法は、判決の結論を左右するほど重大なもの(判決に影響を及ぼすべき法令違反)とはいえない。
結論
弁護人欠席のまま弁論を再開し証拠調べを行った手続は違法であるが、他の証拠により事実認定が可能である本件においては、判決に影響を及ぼす法令違反とはならず、上告は棄却される。
実務上の射程
必要的弁護事件でなくとも、弁護人が付されている以上は、その出席を前提とした手続運営が要請されることを示す。実務上、手続違法があっても証拠の代替性により「判決に影響を及ぼすべき法令違反」を否定する論法として重要である。
事件番号: 昭和36(あ)2207 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
私選弁護人が判決言渡期日として適法な呼出を受けながら右期日に出頭しない場合に、裁判所が国選弁護人を選任し、弁論を再開して事実の取調べをした上、判決言渡をしたとしても、右手続に違法があるとはいえない。