本件において、原審が、検察官の請求により、第一審ではその請求もなされなかつた現場検証を採用決定し、これを施行した措置に違法はない。(注、本件第一審では司法警察員作成の実況見分調書が取調べられている。)
第一審でなされていない現場検証を控訴審において新たに施行した措置が違法でないとされた事例
刑訴法393条
判旨
控訴審において、第一審では請求されなかった証拠を検察官の請求により採用し、取調べの結果に基づき量刑不当を理由として第一審判決を破棄自判することは適法である。
問題の所在(論点)
控訴審において、第一審で請求されなかった新たな証拠を取り調べた上で、その結果を第一審の記録とあわせて検討し、量刑不当を理由に第一審判決を破棄自判することは、控訴審の構造上許されるか。
規範
控訴審は事後審としての性格を有するが、事実の誤認や量刑の不当を是正するために必要な範囲で、当事者の請求に基づき新たな証拠を取り調べることができる(刑事訴訟法393条1項参照)。その上で、第一審の訴訟記録および控訴審における取調べの結果を総合検討し、第一審判決が不当であると判断した場合には、これを破棄して自ら判決を言い渡す(同法400条但書)ことが認められる。
重要事実
被告人に対し過失致死傷罪等の事案において第一審判決が下された後、検察官が量刑不当を理由に控訴した。控訴審において、検察官は第一審では請求していなかった現場検証を請求し、原審(控訴審)はこれを受諾。受命裁判官による現場検証を施行し、その検証調書を取り調べた。原審は、第一審の訴訟記録とこの新たな証拠の取調べ結果を総合的に検討した結果、検察官の量刑不当の主張を認め、第一審判決を破棄して自ら判決を言い渡した(自判)。
事件番号: 昭和27(あ)5410 / 裁判年月日: 昭和29年3月16日 / 結論: 棄却
証人Aの供述につき所論のように弁護人の異議申立により排除決定があつたのは、Bからの伝聞事項に関する部分のみであること原判決の説示するとおりである。そして第一審判決が証拠に引用したのは、前記証人の直接見分した事実に関する供述部分であると原審は認めたのであつて、その判断に誤りはない。
あてはめ
原審が、検察官の請求に基づき、第一審において請求のなかった現場検証を採用決定し、検証調書を取り調べた措置は、控訴審における証拠調べの手続として正当である。その上で、第一審の記録と新証拠の内容を総合検討して量刑を判断していることから、第一審判決の当否を事後的に審査する過程で必要かつ合理的な範囲での事実の補填がなされたといえる。したがって、量刑不当を理由とする破棄自判のプロセスに違法な点は認められない。
結論
適法である。控訴審が新証拠に基づき、第一審の訴訟記録と総合検討して量刑不当を理由に破棄自判した措置に違法はない。
実務上の射程
控訴審における証拠調べの許容性と、それに基づく量刑不当の判断権限を確認した判例である。答案上は、控訴審の事後審的性格を前提としつつ、刑事訴訟法393条1項による「事実の取調べ」が、破棄自判(400条)の基礎となり得ることを説明する際に活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)2610 / 裁判年月日: 昭和28年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審が第1審判決を破棄し自判する場合において、第1審の刑と比較して重くなければ不利益変更禁止の原則に反しない。また、訴訟記録や証拠に基づき直ちに判決できると認めるときは、差戻しをせず自ら判決を下すことが可能である。 第1 事案の概要:被告人が控訴した事件において、控訴審(原控訴裁判所)が第1審判…
事件番号: 昭和28(あ)2859 / 裁判年月日: 昭和30年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において量刑不当を理由に第一審判決を破棄自判する場合、控訴審は第一審判決の確定した事実に対して法律を適用すれば足り、改めて事実を摘示することを要しない。 第1 事案の概要:被告人が第一審判決を受けた後、控訴審において第一審判決の事実認定自体には争いがなかった。弁護人は控訴審において単に量刑不…