控訴審がなんら事実の取調をしないで第一審判決より重い刑を科しても、刑訴法四〇〇条但書に違反しない。
刑訴法四〇〇条但書に違反しないとされた事例
刑訴法400条但書
判旨
控訴審が事実の取調べを行わずに、第一審の執行猶予付き判決を破棄して実刑を言い渡すことは、刑事訴訟法400条但書に違反しない。
問題の所在(論点)
控訴審が事実の取調べを行わずに、第一審の執行猶予付き判決を破棄して実刑を言い渡す自判を行うことが、刑事訴訟法400条但書の解釈として許されるか。
規範
控訴審において、事実の取調べを改めて行うことなく、書面審理のみに基づき第一審判決を破棄し、第一審よりも重い刑(実刑)を科す自判を行うことは、刑事訴訟法400条但書に違反しない。
重要事実
被告人に対し、第一審は禁錮1年(執行猶予4年)を言い渡した。これに対し、控訴審は事実の取調べを別途行うことなく、訴訟記録等の書面上の調査のみに基づき、第一審判決を破棄。自ら被告人に対し禁錮6月の実刑を言い渡した。弁護人は、控訴審が事実の取調べを行わずに執行猶予を剥奪して実刑を科したことは、同法400条但書に違反し、憲法31条にも反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁判所大法廷の先例によれば、控訴審が新たな事実取調べを行わず、記録の精査のみに基づき、第一審の量刑を不当として破棄し、第一審よりも重い刑を科すことは、刑事訴訟法400条但書が許容する範囲内である。本件においても、原審は記録上の調査に基づき自判しており、手続上の違法は認められない。反対意見が指摘する直接審理主義・口頭弁論主義の要請という観点は、現行の事後審的性格を有する控訴審制度下においては、直ちに自判を制限する根拠にはならない。
結論
控訴審が事実取調べをせず第一審より重い刑を科しても、刑事訴訟法400条但書には違反しない。
実務上の射程
量刑不当を理由とする破棄自判において、控訴審が独自の事実取調べを行う義務がないことを確認する。答案上は、控訴審の事後審的性格を強調する際に利用可能だが、現代の訴訟実務や学説では直接審理主義の観点から批判も根強く、特に「被告人に不利益な事実認定の変更」を伴う場合には慎重な検討が必要となる。
事件番号: 昭和42(あ)127 / 裁判年月日: 昭和42年8月31日 / 結論: 棄却
本件において、原審が、検察官の請求により、第一審ではその請求もなされなかつた現場検証を採用決定し、これを施行した措置に違法はない。(注、本件第一審では司法警察員作成の実況見分調書が取調べられている。)
事件番号: 昭和38(あ)2675 / 裁判年月日: 昭和39年5月29日 / 結論: 棄却
(裁判官山田作之助同城戸芳彦の少数意見)多数意見は、第一審判決が懲役刑の執行猶予を言渡した場合に、控訴審がなんら事実の取調をしないで、第一審判決を量刑不当として破棄し、みずから訴訟記録および第一審で取り調べた証拠のみによつて、ただちに懲役刑(実刑)の言渡をしても、刑訴法第四〇〇条但書に違反するものではないとした昭和二七…