控訴裁判所が何ら事実の取調をしないで第一審判決より重い刑を科しても刑訴四〇〇条但書に違反しないことは、当裁判所大法廷屡次の判例とするところである。(昭和三〇年六月二二日言渡、刑集九巻八号一一八九頁以下、昭和三一年七月一八日言渡、刑集一〇巻七号一一七三頁以下、昭和三二年二月一五日言渡、刑集一一巻二号七五六頁以下の各大法廷判決参照。)
控訴裁判所が事実の取調をしないで第一審判決より重い刑を科する場合と刑訴第四〇〇条但書。
刑訴法400条但書,憲法31条,憲法37条
判旨
控訴裁判所が事実の取調べを行わずに、第一審判決を破棄して自判により第一審より重い刑を科すことは、刑事訴訟法400条但書に違反しない。
問題の所在(論点)
控訴裁判所が刑事訴訟法400条に基づき自ら判決をする場合において、事実の取調べをすることなく、第一審判決の量刑を不当としてより重い刑を科すことが、同条但書に違反するか。
規範
控訴裁判所が第一審判決を破棄して自判する際(刑事訴訟法400条)、特段の事実の取調べを行わなくても、記録に基づき第一審の量刑が不当であると判断できる場合には、第一審より重い刑を科すことができる。これは同条但書の趣旨に反するものではない。
重要事実
被告人両名に対し、第一審判決が言い渡されたが、控訴審において事実の取調べが別途行われないまま、第一審判決が破棄され、第一審よりも重い刑が科された。弁護人は、事実の取調べなしに重い刑を科すことは刑事訴訟法400条但書に違反する旨を主張して上告した。
あてはめ
判例の趣旨に照らせば、控訴審は事後審的性格を有しており、第一審の記録や提出された証拠資料に基づき、第一審の量刑判断が不当であると評価することは可能である。本件において、控訴裁判所が新たな事実取調べを行わずに第一審より重い刑を科したとしても、それは法が認める自判の範囲内であり、手続上の違法は認められない。
結論
控訴裁判所が事実の取調べをせず第一審より重い刑を科すことは、刑訴法400条但書に違反しない。
実務上の射程
控訴審の自判権と不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)の限界を画する際、400条但書の解釈として用いる。被告人のみが控訴した場合には不利益変更禁止が適用されるが、検察官が量刑不当を理由に控訴している場合には、事実取調べなしでの重刑科刑が許容されることを裏付ける。答案上は、控訴審の事後審としての性格を強調する文脈で活用する。
事件番号: 昭和27(あ)276 / 裁判年月日: 昭和33年7月2日 / 結論: 棄却
一 控訴審における公判の審理が、単に、控訴趣意書に基く陳述とこれに対する相手方の答弁だけであつても、被告人に対しては、右公判に出頭する機会が適法に与えられ、しかも検察官が出席し、弁護人が出頭して、弁論をしている以上、憲法第三七条第一項、第八二条第一項に違反しない。 二 第一審の有罪判決に対し、検察官、被告人双方共控訴を…
事件番号: 昭和30(あ)3957 / 裁判年月日: 昭和32年5月31日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】控訴裁判所が第一審判決の量刑不当を理由に被告人に不利益な自判を行う際、必ずしも自ら事実の取調べを行う必要はなく、訴訟記録等の調査のみで足りる。 第1 事案の概要:被告人A及びBは、監禁、傷害、公職選挙法違反等の罪で第一審において執行猶予付きの懲役刑を言い渡された。検察官は量刑不当を理由に控訴し、控…