判旨
控訴審において量刑不当を理由に第一審判決を破棄自判する場合、控訴審は第一審判決の確定した事実に対して法律を適用すれば足り、改めて事実を摘示することを要しない。
問題の所在(論点)
刑法および刑事訴訟法上の問題として、控訴審が量刑不当を理由に第一審判決を破棄自判する場合、判決書において改めて事実を摘示する必要があるか(事実摘示義務の範囲)。
規範
控訴審において、第一審判決の事実認定に争いがなく量刑不当のみが主張された場合、控訴審が破棄自判するにあたっては、第一審判決が確定した事実に対して法律を適用すれば足りる。控訴審として更に改めて事実の摘示をすることを要するものではない。
重要事実
被告人が第一審判決を受けた後、控訴審において第一審判決の事実認定自体には争いがなかった。弁護人は控訴審において単に量刑不当を主張し、控訴審はこれを理由ありとして第一審判決を破棄し、自ら判決(自判)を言い渡した。この際、控訴審判決において改めて犯罪事実の摘示がなされなかったため、被告人側が訴訟法違反を理由に上告した。
あてはめ
本件では、控訴審における争点は量刑の不当性に限定されており、第一審判決が認定した事実関係については当事者間に争いがなかった。このような場合、控訴審は第一審が適法に認定・確定した事実を前提として、その事実に対する刑の量定の是非を判断すれば足りる。したがって、第一審判決の確定した事実を引用または前提として法律を適用することで、裁判の基礎となる事実は明確に示されているといえる。改めて事実を摘示しないことは、訴訟手続上の違法には当たらない。
結論
控訴審が量刑不当を理由に破棄自判する場合、改めて事実の摘示を行う必要はない。
実務上の射程
事件番号: 昭和38(あ)2675 / 裁判年月日: 昭和39年5月29日 / 結論: 棄却
(裁判官山田作之助同城戸芳彦の少数意見)多数意見は、第一審判決が懲役刑の執行猶予を言渡した場合に、控訴審がなんら事実の取調をしないで、第一審判決を量刑不当として破棄し、みずから訴訟記録および第一審で取り調べた証拠のみによつて、ただちに懲役刑(実刑)の言渡をしても、刑訴法第四〇〇条但書に違反するものではないとした昭和二七…
量刑不当による破棄自判(刑事訴訟法397条2項、400条但書)の際の判決書の記載事項に関する射程を有する。事実認定に争いがある場合や、他の理由(事実誤認等)で破棄する場合には、依然として事実摘示が必要となる点に注意を要する。
事件番号: 昭和29(あ)3598 / 裁判年月日: 昭和30年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判における事実認定において、第一審判決の証拠判断に合理的な理由があり、それを覆すべき証拠がない場合には、控訴審が第一審の認定を正当として維持することは適法である。 第1 事案の概要:被告人が犯行を行ったとする第一審判決に対し、弁護人は証拠判断および事実認定の違法、憲法31条違反、理由の食い違…
事件番号: 昭和44(あ)908 / 裁判年月日: 昭和44年10月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴されていない犯罪事実であっても、それが本件起訴にかかる犯罪事実の情状として認定され、量刑の資料とされるにすぎない場合は、憲法31条、39条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事起訴された事案において、原判決が起訴されていない一定の事実を認定した。これに対し弁護側は、当該事実を量刑の資料…
事件番号: 昭和36(あ)1015 / 裁判年月日: 昭和36年7月28日 / 結論: 棄却
所論は原審の訴訟手続が少年法第五〇条に違反し違法であることを前提として違憲をいうが、少年法第五〇条は訓示規定であつて、同条の規定に違反するところがあつてもこれを以て違法といえことはできないことは既に当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第一二二六号、同年一二月八日第一小法廷判決、集三巻一二号一九一五頁、昭和二五年(れ)第一八…
事件番号: 昭和40(あ)1761 / 裁判年月日: 昭和41年6月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判が迅速を欠き憲法37条1項に反する場合であっても、そのこと自体は判決に影響を及ぼすものではないため、これを理由に判決を破棄することはできない。 第1 事案の概要:被告人が上告審において、原裁判所(控訴審)の審理が憲法37条1項の保障する「迅速な裁判」の要請に反するものであると主張した。具体的に…