所論は原審の訴訟手続が少年法第五〇条に違反し違法であることを前提として違憲をいうが、少年法第五〇条は訓示規定であつて、同条の規定に違反するところがあつてもこれを以て違法といえことはできないことは既に当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第一二二六号、同年一二月八日第一小法廷判決、集三巻一二号一九一五頁、昭和二五年(れ)第一八四六号、同二六年四月一〇日第三小法廷判決)とするところであつて、所論違憲の主張が前提を欠き適法な上告理由に当らない。
少年法第五〇条の規定の性質。
少年法50条
判旨
少年法50条は訓示規定にすぎず、同条に違反する訴訟手続があったとしても、これを直ちに違法ということはできない。
問題の所在(論点)
少年の刑事裁判において「親切に、かつ、和やかに」審理を行うべきとする少年法50条の規定の法的性質が問題となる。すなわち、同条違反を理由として判決を破棄しうるか(訴訟手続の法令違反となるか)。
規範
少年法50条(少年の被告人に対する審理における親切な配慮)は、少年の特性を考慮した訴訟運営のあり方を示した訓示規定である。したがって、同条の規定に違反する点があったとしても、それを理由に判決に影響を及ぼす訴訟手続の法令違反として違憲や違法を主張することはできない。
重要事実
少年法が適用される被告人に対し、第一審が禁錮刑の執行猶予を言い渡した。これに対し、控訴審が新たな事実の取調べを行うことなく、第一審の量刑を不当として破棄し、訴訟記録および第一審の証拠のみに基づき実刑(執行猶予なし)の言渡しをした事案である。弁護人は、このような控訴審の手続が少年法50条に違反し、憲法違反にあたると主張して上告した。
事件番号: 昭和47(あ)1296 / 裁判年月日: 昭和48年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、上告趣意が単なる事実誤認、法令違反、量刑不当の主張にすぎず、刑訴法405条の上告理由に該当しないとして上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:弁護人は、下級審の判断に対し、事実誤認、単なる法令違反、および量刑不当を理由として上告を申し立てた。なお、事案の具体的な犯罪事実等については…
あてはめ
最高裁は、少年法50条を「訓示規定」と解する。訓示規定である以上、裁判所が審理において少年の心情を害した、あるいは配慮を欠いたと評価されるような手続的な瑕疵があったとしても、そのこと自体が直ちに訴訟手続の違法を構成することはない。本件では、控訴審が事実の取調べをせず記録のみで量刑を重くしたが、これは大法廷判決の趣旨に照らしても許容される範囲内であり、少年法50条違反を前提とした違憲の主張は前提を欠く。
結論
少年法50条違反を理由とする上告は認められない。上告棄却。
実務上の射程
刑事訴訟法上の訴訟手続の法令違反を構成するか否かの判断基準において、訓示規定と法的強制力を有する効力規定の区別を明確にした。少年事件特有の配慮義務を「裁判官の裁量」や「努力目標」の範囲に留める趣旨であり、実務上、同条違反のみを独立した破棄理由として構成することは困難である。
事件番号: 昭和28(あ)2859 / 裁判年月日: 昭和30年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において量刑不当を理由に第一審判決を破棄自判する場合、控訴審は第一審判決の確定した事実に対して法律を適用すれば足り、改めて事実を摘示することを要しない。 第1 事案の概要:被告人が第一審判決を受けた後、控訴審において第一審判決の事実認定自体には争いがなかった。弁護人は控訴審において単に量刑不…
事件番号: 昭和38(あ)2675 / 裁判年月日: 昭和39年5月29日 / 結論: 棄却
(裁判官山田作之助同城戸芳彦の少数意見)多数意見は、第一審判決が懲役刑の執行猶予を言渡した場合に、控訴審がなんら事実の取調をしないで、第一審判決を量刑不当として破棄し、みずから訴訟記録および第一審で取り調べた証拠のみによつて、ただちに懲役刑(実刑)の言渡をしても、刑訴法第四〇〇条但書に違反するものではないとした昭和二七…
事件番号: 昭和36(あ)1293 / 裁判年月日: 昭和36年9月26日 / 結論: 棄却
所論は、原審訴訟記録の表紙に「報告事件」と朱書されていることは、憲法七六条三項、三二条、三一条に違反すると主張するが、かかることは下級審裁判官に対し何ら審理上の圧力を加えるものではないから、所論違憲の主張は結局すべて前提を欠くことに帰し、採用できない。(なお、右朱書がなされるに至つたのは、昭和三六年一月二三日附最高裁判…
事件番号: 昭和40(あ)1761 / 裁判年月日: 昭和41年6月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判が迅速を欠き憲法37条1項に反する場合であっても、そのこと自体は判決に影響を及ぼすものではないため、これを理由に判決を破棄することはできない。 第1 事案の概要:被告人が上告審において、原裁判所(控訴審)の審理が憲法37条1項の保障する「迅速な裁判」の要請に反するものであると主張した。具体的に…