証人Aの供述につき所論のように弁護人の異議申立により排除決定があつたのは、Bからの伝聞事項に関する部分のみであること原判決の説示するとおりである。そして第一審判決が証拠に引用したのは、前記証人の直接見分した事実に関する供述部分であると原審は認めたのであつて、その判断に誤りはない。
第一審判決が証人の供述中の異議申立のあつた伝聞部分のみを排除し、その余を罪証の用に供したと認められる場合
刑訴法335条1項,刑訴法320条,刑訴法324条2項,刑訴法309条,刑訴規則205条の6
判旨
第一審判決が違法な証拠を認定に用いた場合であっても、他の適法な証拠のみによって犯罪事実を十分に認定できるときは、当該違法は判決に影響を及ぼすべきものとはいえず、判棄事由にならない。
問題の所在(論点)
第一審判決が違法な証拠を認定に用いた場合、他の適法な証拠によって事実を認定可能であれば、刑事訴訟法上の破棄事由にならないか。
規範
第一審判決において、証拠能力のない証拠が罪証に供されたという違法がある場合であっても、それ以外の適法な挙示証拠のみを総合して、判示事実を優に認定することができるのであれば、その違法は判決を破棄すべき事由とはならない。
重要事実
第一審判決が証拠能力を欠く報告書を事実認定の基礎とした。控訴審は、当該報告書を証拠としたことは違法であると認めたものの、第一審が挙げた他の証拠のみからでも犯罪事実を十分に認定できると判断し、一審判決を維持した。これに対し、被告人側が適法な証拠のみによる認定の可否について上告した事案である。
あてはめ
本件において、第一審判決が証拠能力のない報告書を罪証に供した点には違法が認められる。しかし、当該報告書を除外したとしても、第一審が挙示した他の証拠(証人Aが直接見分した事実に関する供述等)を総合すれば、判示事実を優に認定することが可能である。したがって、証拠採用の違法はあっても、それが直ちに判決の結果に影響を及ぼすものとは認められない。
結論
第一審判決に証拠採用の違法があっても、他の適法な証拠により事実が認定可能であれば、控訴審が判決を破棄しなかった判断は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
証拠能力の欠如や伝聞排除の懈怠が判決に影響を及ぼすか否かの判断基準(無害な誤謬)を示す。実務上は、違法な証拠を除外した残りの証拠によって、合理的な疑いを超えて事実が認定可能かを検討する際の根拠となる。
事件番号: 昭和43(あ)1082 / 裁判年月日: 昭和44年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼすべき事実誤認や法令違反がある場合であっても、結論において正当であると認められるときは、原判決を破棄する必要はない。 第1 事案の概要:被告人が信号無視(赤信号での進入)をしたとして起訴された事案。第一審は被告人の信号無視を認定し、有罪とした。原判決(控訴審)は、第一審の認定を支持…