判旨
判決に影響を及ぼすべき事実誤認や法令違反がある場合であっても、結論において正当であると認められるときは、原判決を破棄する必要はない。
問題の所在(論点)
原判決が証拠に基づかない事実を前提として事実認定の妥当性を判断した場合、その事由は直ちに原判決を破棄すべき事由となるか。
規範
控訴審判決に事実誤認や訴訟手続の法令違反が存在したとしても、その誤りが判決の結論(主文)に影響を及ぼさないことが明らかである場合には、当該判決を破棄すべき理由とはならない(刑訴法411条等の趣旨に鑑みた判断)。
重要事実
被告人が信号無視(赤信号での進入)をしたとして起訴された事案。第一審は被告人の信号無視を認定し、有罪とした。原判決(控訴審)は、第一審の認定を支持する際、複数の信号機(甲・乙・丙・丁)の点灯サイクルの時間的間隔について、証拠に基づかない事実((2)3秒経過後に丙が赤、(3)さらに10秒後に乙が青等)を前提として判断を示した。
あてはめ
原判決が判示した信号サイクルの詳細な時間的関係(上記事実(2)および(3))については、記録上これを認めるに足りる証拠が存在しない。しかし、第一審判決が挙示の証拠により認定した「被告人が赤信号を見落として交差点に進入した」という結論自体は、証拠に照らして相当である。したがって、原判決が誤った事実を前提とした点は違法であるが、結論において第一審を支持した判断は正当であり、当該違法は判決に影響を及ぼさないことが明らかである。
結論
原判決の違法は判決に影響を及ぼさないため、本件上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟における「判決に影響を及ぼすべき違法」の有無を検討する際の射程となる。認定の過程に証拠に基づかない事実が含まれていても、他の証拠により認定された主要事実や結論の正当性が維持される場合には、破棄理由にならないことを示す実務上の指針となる。
事件番号: 昭和44(あ)1969 / 裁判年月日: 昭和45年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審判決において第一審判決の解釈に誤りがあり、事実誤認の主張を前提を欠くとして排斥した点に法令違反があるとしても、第一審の事実認定自体が正当であれば判決に影響を及ぼさない。実質的に事案を検討した結果、第一審の認定が証拠に基づき肯定できる場合には、控訴棄却の結論は維持されるべきである。 第1 事案…
事件番号: 昭和27(あ)5410 / 裁判年月日: 昭和29年3月16日 / 結論: 棄却
証人Aの供述につき所論のように弁護人の異議申立により排除決定があつたのは、Bからの伝聞事項に関する部分のみであること原判決の説示するとおりである。そして第一審判決が証拠に引用したのは、前記証人の直接見分した事実に関する供述部分であると原審は認めたのであつて、その判断に誤りはない。