判旨
判決において、適用罰条に規定されていない種類の刑を言い渡し、かつ理由中で選択した刑種と主文の刑種が矛盾することは、法令適用の誤りおよび理由齟齬の違法に該当し、原判決を破棄すべき事由となる。
問題の所在(論点)
控訴審判決において、法令上の根拠がない刑種を主文で言い渡すこと、および理由と主文の刑種が矛盾することが、判決に影響を及ぼすべき法令の違反(刑事訴訟法411条1号)にあたるか。
規範
裁判所が刑を言い渡す際には、当該罪名に対して法律が定める刑種の範囲内でなければならず、また、判決の理由中で示した刑種の選択と、主文における刑の言渡しは整合していなければならない。これに反する言渡しは、適用罰条に規定されていない刑を言い渡した違法、および理由齟齬の違法を構成し、刑事訴訟法411条1号(判決に影響を及ぼすべき法令の違反)に該当する。
重要事実
被告人に対し、第一審判決が刑法211条前段(業務上過失致死傷罪)を適用し、禁錮刑を選択した。控訴審判決(原判決)は、量刑不当を理由に第一審判決を破棄し自ら判決するにあたり、第一審と同様に禁錮刑を選択する旨の適条を引用しながら、その主文においては「懲役六月」を言い渡した。
あてはめ
原判決は、適用罰条である刑法211条前段および罰金等臨時措置法に基づき、第一審が禁錮刑を選択した判断を引用している。しかし、主文では懲役刑を言い渡しており、これは適用罰条に規定されていない刑を言い渡した「法令適用の違法」にあたる。また、理由中では禁錮刑を選択しながら主文で懲役刑を命じている点は、判決の内容に矛盾がある「理由齟齬の違法」といえる。これらの違法は判決の結果に直結しており、正義に反する。
結論
原判決には法令適用の誤りと理由齟齬の違法があるため、これを破棄する。自判により、被告人を禁錮6月に処し、3年間の執行猶予を付す。
事件番号: 昭和46(あ)820 / 裁判年月日: 昭和47年6月27日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】判決の理由中で懲役刑を選択し併合罪加重を行ったにもかかわらず、主文で禁錮刑を言い渡すことは、主文と理由の矛盾として破棄事由に該当する。 第1 事案の概要:被告人は酒酔い運転、業務上過失致死、負傷者不救護、事故不申告の罪に問われた。原判決(二審)は、一審判決を量刑不当により破棄して自判するにあたり、…
実務上の射程
刑事訴訟の実務において、主文と理由の不一致や法外の刑の言渡しが絶対的破棄事由に近い重大な違法であることを示す。答案上は、罪刑法定主義の観点や判決の整合性の議論において、裁判所の書記ミスであっても適法な刑の言渡しを欠く場合は破棄を免れないことを論じる際に参照し得る。
事件番号: 昭和59(あ)1441 / 裁判年月日: 昭和60年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に事実誤認や求刑の誤記といった瑕疵があっても、過失の態様や結果の重大性に照らして量刑が相当と認められる場合には、刑訴法411条を適用して原判決を破棄する必要はない。 第1 事案の概要:被告人が過失運転致死傷罪等に問われた事案において、原判決は量刑事情として「被告人は当時保護観察中であった」と判…