行為後の改正による重い罰則の適用と正義
判旨
犯罪後の法律により刑の変更があった場合、刑法6条・10条に従い最も軽い刑を定めた法律を適用すべきであるが、法令適用の誤りがあっても選択された刑が旧法の範囲内であり著しく正義に反すると認められない限り、原判決は維持される。
問題の所在(論点)
犯罪後に法定刑が引き上げられた場合において、誤って改正後の重い法律を適用したことが、刑訴法411条1号の「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」として原判決を破棄すべき事由に該当するか。
規範
犯罪後の法律により刑の変更があった場合には、刑法6条および10条に基づき、新旧両法を比較して最も軽い刑を定めた法律を適用しなければならない。ただし、上告審において当該法令適用の違法が認められる場合であっても、選択された刑の種類および量が旧法の規定の範囲内であり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる事情がない限り、上告は棄却される。
重要事実
被告人の行為について、第一審判決は刑法211条前段(業務上過失致死傷罪)等を適用したが、犯罪後に同条が改正され法定刑が重くなっていた。しかし第一審は、改正後の重い規定を適用しつつ、所定刑の中から罰金刑を選択し、被告人を罰金3万円に処した。原判決もこれを是認したため、弁護人が法令違反を理由に上告した。
あてはめ
本件では、刑法6条に基づき軽い刑である改正前の規定を適用すべきところ、重い改正後規定を適用した点で法令適用の違法がある。しかし、第一審が選択した罰金3万円という刑は、改正前の規定における罰金刑(5万円以下)の範囲内にとどまっている。したがって、改正前の法律を適用した場合と比較しても実質的な不利益は小さく、本件の具体的な刑の量定に照らせば、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
結論
事件番号: 昭和44(あ)557 / 裁判年月日: 昭和44年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により刑の変更があった場合、裁判所は刑法6条及び10条を適用すべきであるが、判決の文脈から改正前の軽い刑を適用したと解される場合は、当該不備は判決に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人が業務上過失傷害罪および道路交通法違反の罪に問われた事案において、第一審判決後、業務上過失傷害…
法令適用の誤りは存在するが、宣告された刑が旧法の範囲内であり著しく正義に反するとはいえないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑法6条・10条の「刑の軽重」の判断および適用ミスに関する基準を示す。実務上、法令適用の誤りがあっても、それが結論(量刑)に実質的な不利益を与えていない場合には、刑訴法上の破棄事由にならないことを判断する際の指針となる。
事件番号: 昭和43(あ)2764 / 裁判年月日: 昭和44年7月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法の一部改正があった場合において、行為時の法律を適用することが憲法及び刑法の原則に合致する。本判決は、改正前の業務上過失致死傷罪(刑法211条前段)を適用した原判決を維持したものである。 第1 事案の概要:被告人が業務上過失致死傷罪に問われた事案において、第一審判決(昭和43年4月12日言渡)は…
事件番号: 昭和45(あ)1451 / 裁判年月日: 昭和46年4月8日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により刑の変更があった場合には、刑法6条に基づき新旧両法の法定刑を比較し、軽い方の規定を適用しなければならない。行為時に懲役刑の定めがない罪について、法改正後の懲役刑を選択して処断することは法令違反であり、破棄事由に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、昭和43年3月13日に業務上過…
事件番号: 昭和45(さ)1 / 裁判年月日: 昭和45年4月16日 / 結論: 破棄自判
昭和四三年法律第六一号による改正刑法施行前の業務上過失傷害の所為につき懲役刑を言渡した判決は、刑法六条に違反したものであり、被告人に不利益であるから、破棄すべきである。