刑法第五六条第一項、第五七条のいわゆる累犯加重の規定は、有期懲役に処すべきときに適用があるのであつて、禁錮刑に処すべきときに適用すべきものではない。
禁錮刑に処すべき場合と累犯加重
刑法56条1項,刑法57条
判旨
刑法56条1項および57条に規定される累犯加重は、有期懲役に処すべき場合にのみ適用され、禁錮刑に処すべき場合には適用されない。
問題の所在(論点)
禁錮刑を言い渡すべき事案において、刑法56条1項および57条の累犯加重規定を適用し、刑を過重することができるか。
規範
刑法56条1項および57条の規定による累犯加重は、再犯の罪につき有期懲役に処すべきときに限って適用される。したがって、禁錮刑に処すべき罪については、たとえ累犯の要件を満たす前科があったとしても、同条による加重を行うことはできない。
重要事実
被告人が再犯の罪を犯し、裁判所が当該罪に対して禁錮刑を選択して処断しようとした事案である。被告人には累犯加重の前提となる前科が存在していたが、原審(判決文からは詳細不明)は、本件のように禁錮刑を科す場合には累犯加重の規定は適用されないと判断した。
あてはめ
刑法56条1項は「懲役に処せられた者が…更に罪を犯し、これに対して有期懲役に処すべきとき」を累犯の定義としている。本件において、原判決が判示した通り、同条項および57条の累犯加重は「有期懲役に処すべきとき」を適用対象として明示している。禁錮刑は懲役刑とは刑種を異にするものであり、文言上、累犯加重の対象には含まれないと解される。
結論
禁錮刑に処すべきときには累犯加重の規定を適用することはできない。
実務上の射程
罪数論や刑の適用に関する基本的事例で用いられる。懲役と禁錮が選択刑となっている罪において、累犯加重の有無が刑種の選択(懲役か禁錮か)に影響を与えるという実務上の留意点を示す際に参照される。罪刑法定主義の観点から文言を厳格に解釈した例といえる。
事件番号: 昭和46(あ)1872 / 裁判年月日: 昭和47年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】併合罪のうち一方が禁錮刑、他方が懲役刑である場合に刑法47条本文により加重を行う際は、同条但書の制限が適用され、各罪につき定めた刑の長期の合計を超えることはできない。 第1 事案の概要:被告人は業務上過失致死罪(旧刑法211条前段:最高長期5年)および道路交通法違反(当時の同法118条1項5号:最…
事件番号: 昭和37(あ)2816 / 裁判年月日: 昭和39年11月24日 / 結論: 棄却
一 業務上過失致死傷罪にいわゆる業務につき、それが社会生活上の地位に基づきなされることを要しないとの原判示は相当でないが、原判決は被告人が自動車の運転を反覆断続して行なつていた事実を認定しているところ、右事実はとりもなおさず社会生活上の地位にほかならないから、結局原判決の右法令解釈の誤りは判決に影響を及ぼさない。 二 …
事件番号: 昭和44(あ)850 / 裁判年月日: 昭和45年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】併合罪のうち有期の懲役を選択した罪につき再犯加重を行った後、他罪の禁錮との比較の結果として禁錮を言い渡すこととなっても、当初の再犯加重は違法ではない。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反及び業務上過失致死の罪に問われた。第一審は、道交法違反につき有期懲役を選択して再犯加重を行い、業務上過失致…