刑法四七条但書の遺脱と正義
判旨
併合罪のうち一方が禁錮刑、他方が懲役刑である場合に刑法47条本文により加重を行う際は、同条但書の制限が適用され、各罪につき定めた刑の長期の合計を超えることはできない。
問題の所在(論点)
刑法47条本文による併合罪の加重において、加重後の処断刑の上限が各罪の長期の合計(本件では5年6月)を超えることができるか。特に、同条但書の適用範囲が問題となる。
規範
刑法47条本文により併合罪のうち最も重い罪の刑にその刑期の2分の1を加重する場合であっても、同条但書の規定により、各罪につき定めた刑の長期の合計(合算した刑期)を超えることはできない。また、異なる種類の有期刑(禁錮と懲役)を併合する場合でも、この算定制限は維持される。
重要事実
被告人は業務上過失致死罪(旧刑法211条前段:最高長期5年)および道路交通法違反(当時の同法118条1項5号:最高長期6月)の罪に問われた。原審は、業務上過失致死罪につき禁錮刑、道路交通法違反につき懲役刑を選択した上で、両罪を併合罪(刑法45条前段)とし、刑法47条本文を適用して禁錮5年の2分の1を加重した「禁錮7年6月以下」の範囲で処断した。
あてはめ
本件における各罪の法定刑の長期は、業務上過失致死罪が5年、道路交通法違反が6月であり、その合計は5年6月である。刑法47条但書は「各罪の刑の長期の合計を超えてはならない」と明記している。それゆえ、47条本文による加重後の上限は5年6月となるべきところ、原判決はこれを遺脱して「7年6月」としており、法令の適用を誤っているといえる。
結論
併合罪の加重にあたっては刑法47条但書の制限がかかるため、各罪の長期の合計を超える処断刑を設定することは法令違反である。ただし、本件では原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められないため、上告は棄却された。
事件番号: 昭和44(あ)695 / 裁判年月日: 昭和44年7月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】禁錮刑と懲役刑の併合罪において、刑法47条本文により加重した結果の刑期が、各罪の法定刑の長期を合算した刑期を超える場合には、同条但書を適用してその合算した刑期以下で処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、業務上過失致死傷罪(改正前刑法211条前段)と酒酔い運転罪(道路交通法117条の2第1…
実務上の射程
併合罪の加重における処断刑の算定に関する基礎的判例である。答案上は、数罪が併合罪(45条前段)となる場合に、処断刑の範囲を特定する過程で、47条本文による加重と但書による上限の画定をセットで論じる際に用いる。
事件番号: 昭和43(あ)2394 / 裁判年月日: 昭和44年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法45条前段の併合罪において、異なる種類の刑(懲役と禁錮)を選択した上で刑を併せる場合、同法47条但書の制限を超えて処断することは法令の適用を誤ったものといえる。ただし、宣告刑が不当に重いと認められない限り、直ちに原判決を破棄すべき正義に反する事由(刑訴法411条)には当たらない。 第1 事案の…
事件番号: 昭和44(あ)194 / 裁判年月日: 昭和44年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法45条前段の併合罪において、各罪につき懲役刑と禁錮刑という異なる種類の刑を選択した場合、刑法47条但書により、処断刑の長期は各罪の法定刑の長期の合計を超えることはできない。 第1 事案の概要:被告人は、業務上過失傷害罪(旧刑法211条前段)と酒酔い運転罪(道路交通法117条の2第1号)を犯した…
事件番号: 昭和42(あ)207 / 裁判年月日: 昭和42年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】累犯加重を規定する刑法56条および57条は、二重処罰の禁止を定めた憲法39条、および法の下の平等を定めた憲法14条のいずれにも違反しない。 第1 事案の概要:被告人は無免許運転、酩酊運転、および業務上過失致死の罪を犯した。原審(二審)はこれらを併合罪として扱い、かつ被告人に前科があったことから累犯…
事件番号: 昭和44(あ)850 / 裁判年月日: 昭和45年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】併合罪のうち有期の懲役を選択した罪につき再犯加重を行った後、他罪の禁錮との比較の結果として禁錮を言い渡すこととなっても、当初の再犯加重は違法ではない。 第1 事案の概要:被告人は道路交通法違反及び業務上過失致死の罪に問われた。第一審は、道交法違反につき有期懲役を選択して再犯加重を行い、業務上過失致…