判旨
累犯加重を規定する刑法56条および57条は、二重処罰の禁止を定めた憲法39条、および法の下の平等を定めた憲法14条のいずれにも違反しない。
問題の所在(論点)
刑法56条および57条に定められた累犯加重の規定が、憲法39条(二重処罰の禁止)および憲法14条(法の下の平等)に抵触し、違憲とならないか。
規範
累犯加重(刑法56条、57条)は、前科があるという事実そのものに対して再度処罰を科すものではなく、前科があるにもかかわらず更なる犯罪を犯した者の責任の重さや、犯人の危険性を考慮して刑を量定する制度である。したがって、憲法39条の二重処罰の禁止、および憲法14条の法の下の平等に反するものではない。
重要事実
被告人は無免許運転、酩酊運転、および業務上過失致死の罪を犯した。原審(二審)はこれらを併合罪として扱い、かつ被告人に前科があったことから累犯加重の規定を適用して刑を言い渡した。これに対し弁護人は、累犯加重規定は二重処罰の禁止(憲法39条)および法の下の平等(憲法14条)に反し違憲であると主張して上告した。
あてはめ
累犯加重は、既に確定した前罪の刑罰を重ねて科すものではなく、後罪の量刑において被告人の反社会的な性格や改善更生の必要性の高さといった「犯情」を評価する枠組みである。本件においても、被告人が前罪の執行終了後5年以内に再犯に及んだ事実は、後罪そのものの非難可能性を高める要素として機能している。このような差異に基づき異なる刑の範囲を定めることは、合理的な根拠に基づく区別であり、平等原則にも反しない。
結論
刑法56条および57条は合憲である。したがって、これに基づき累犯加重を適用した原判決は正当であり、本件上告は棄却される。
実務上の射程
事件番号: 昭和46(あ)555 / 裁判年月日: 昭和46年5月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】前科を量刑上の資料として参酌することは、憲法39条後段が禁じる二重処罰には当たらず、また憲法14条1項の法の下の平等にも違反しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事事件において有罪判決を受けた際、裁判所が被告人の有する前科を量刑上の資料として参酌し、刑を言い渡した。これに対し弁護人は、前科を量刑に…
累犯加重の合憲性を端的に示した判例である。司法試験においては、二重処罰禁止(39条)の解釈において「『重ねて刑事上の責任を問はれない』とは、同一の犯罪について二度処罰されないという意味である」という定義を導く際の根拠、あるいは累犯加重の趣旨を説明する際の確立した先例として活用できる。
事件番号: 昭和46(あ)1872 / 裁判年月日: 昭和47年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】併合罪のうち一方が禁錮刑、他方が懲役刑である場合に刑法47条本文により加重を行う際は、同条但書の制限が適用され、各罪につき定めた刑の長期の合計を超えることはできない。 第1 事案の概要:被告人は業務上過失致死罪(旧刑法211条前段:最高長期5年)および道路交通法違反(当時の同法118条1項5号:最…
事件番号: 昭和46(あ)936 / 裁判年月日: 昭和46年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の前科を量刑の事情として考慮することは、前科に対する確定判決を変更したり、同一の犯罪に対して重ねて刑罰を科したりするものではないため、憲法39条後段の二重処罰の禁止には抵触しない。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判において有罪判決を受けた際、第一審判決が被告人の前科を考慮して刑を言い渡し、…
事件番号: 昭和42(あ)2747 / 裁判年月日: 昭和44年2月5日 / 結論: 棄却
一所為数法の関係にあたると認定された所為を併合罪にあたると主張する上告論旨は、被告人にとつて不利益な主張であつて、上告理由として許されない。