一所為数法の関係にあたると認定された所為を併合罪にあたると主張する上告論旨は、被告人にとつて不利益な主張であつて、上告理由として許されない。
被告人に不利益な主張であつて上告理由として許されないとされた事例
刑訴法351条,刑法54条1項前段,刑法45条
判旨
被告人に不利益な主張は、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらない。原審が「一所為数法(観念的競合等)」と認定した罪数関係を、上告人が「併合罪」であると主張することは、被告人の利益を求める上告制度の趣旨に反するため不適法である。
問題の所在(論点)
被告人の弁護人が、原審の罪数判断(一所為数法)が誤りであり併合罪とすべきであると主張することは、被告人に不利益な主張として上告理由(刑訴法405条)に該当するか。
規範
被告人の利益を目的とする上告制度の性質上、被告人の側から、原判決よりも被告人に不利益な法律判断(例えば、より重い罪数関係への変更)を求める主張を行うことは、刑事訴訟法405条の上告理由として認められない。
重要事実
第一審または控訴審において、被告人の所為が「一所為数法」(観念的競合や法条競合など、刑の算定上1個の罪として扱われる関係)として認定された。これに対し、弁護人が上告審において、当該所為は「併合罪」(各罪を別個に処罰し、刑を合算・加重する関係)に当たると主張して、判例違反を理由に上告を申し立てた。
事件番号: 昭和47(あ)1296 / 裁判年月日: 昭和48年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、上告趣意が単なる事実誤認、法令違反、量刑不当の主張にすぎず、刑訴法405条の上告理由に該当しないとして上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:弁護人は、下級審の判断に対し、事実誤認、単なる法令違反、および量刑不当を理由として上告を申し立てた。なお、事案の具体的な犯罪事実等については…
あてはめ
原審は被告人の所為を一所為数法として認定したが、上告論旨はこれを併合罪に当たると主張するものである。併合罪としての認定は、刑の加重を招くものであり、一所為数法としての認定に比べて被告人に不利な法的評価を求めるものである。このような被告人にとって不利益な主張は、上告の利益を欠くものであり、適法な上告理由を構成しない。
結論
被告人に不利益な主張は上告理由に当たらないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
答案上は、上告の利益の有無が問題となる場面で活用できる。被告人側から原判決の法令適用を争う際、その帰結が被告人に有利なもの(無罪、減軽、より軽い罪数等)でない限り、適法な上告理由(または控訴理由)として認められないという一般原則を示す一例となる。
事件番号: 昭和44(あ)2556 / 裁判年月日: 昭和45年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告趣意が原判決を具体的に論難するものではなく、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない場合には、適法な上告理由とは認められず上告は棄却される。 第1 事案の概要:本件の上告人(被告人側)は、原判決に対して違憲の主張等を含む上告趣意を提出したが、その内容は原判決の具体的な判断や手続きを的確に論難す…
事件番号: 昭和43(あ)2463 / 裁判年月日: 昭和46年3月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において原判決の判断していない事項について判例違反を主張することは、適法な上告理由とはならない。 第1 事案の概要:被告人が第一審判決における第一の所為と同第二の所為の罪数関係(併合罪か一所為数法か)を争い上告したが、この点は原審(二審)において何ら主張されておらず、原判決も判断を示していな…
事件番号: 昭和45(あ)2141 / 裁判年月日: 昭和46年2月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑不当の主張は適法な上告理由に当たらない。また、原判決が引用判例に抵触する判断を示していない場合には判例違反の主張も認められない。 第1 事案の概要:被告人側が量刑不当および判例違反を理由として上告を申し立てた。具体的には、原判決の刑の量定が重すぎること、および仙台高等裁判所の判例に矛盾抵触する…
事件番号: 昭和43(あ)2096 / 裁判年月日: 昭和44年3月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判の延期を求める主張は、刑事訴訟法405条に規定された適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:被告人が最高裁判所に対し上告を提起したが、その上告趣意の内容は「裁判の延期を求める」というものであった。 第2 問題の所在(論点):裁判の延期を求める旨の主張が、刑事訴訟法405条所定の上告理由…