判旨
併合罪のうち有期の懲役を選択した罪につき再犯加重を行った後、他罪の禁錮との比較の結果として禁錮を言い渡すこととなっても、当初の再犯加重は違法ではない。
問題の所在(論点)
懲役を選択した罪に再犯加重を施した後、併合罪の処理(刑の比較)の結果、懲役ではなく禁錮を主刑として言い渡す場合において、先行する再犯加重は認められるか。刑法72条の「刑を科すべき順序」の解釈が問題となる。
規範
併合罪において二個以上の有期の懲役又は禁錮に処すべき罪がある場合、まず懲役を選択した各罪につき再犯加重(刑法56条)及び法律上の減軽を行い、その後に併合罪の加重(47条)を行う。この結果、最終的に被告人に禁錮を言い渡すことになっても、刑法72条の順序に従った再犯加重の手続自体が違法となることはない。
重要事実
被告人は道路交通法違反及び業務上過失致死の罪に問われた。第一審は、道交法違反につき有期懲役を選択して再犯加重を行い、業務上過失致死罪については禁錮を選択した。両罪の刑を比較した結果、重い禁錮を選択して併合罪加重を行い、被告人を禁錮8月に処した。原判決は、最終的に禁錮を言い渡しながら再犯加重を行うのは違法であるとして第一審判決を破棄したため、検察側が上告した。
あてはめ
刑法72条は、再犯加重(第2号)を併合罪の加重(第4号)より先行させる。本件では、道交法違反につき懲役を選択した以上、この段階で再犯加重を行うことは法規に忠実な処理である。その後の併合罪の処理において、業務上過失致死罪の禁錮と道交法違反の懲役(再犯加重後)を比較し、禁錮を重いものとしてこれを選択したとしても、それは刑の選択・比較の結果に過ぎない。したがって、最終的な宣告刑が禁錮であっても、懲役を選択した罪についてなされた再犯加重の効力が否定される理由はない。
結論
懲役を選択した罪に対する再犯加重は適法であり、その後に併合罪として禁錮を言い渡すことも何ら妨げられない。原判決の法令解釈は誤りである。
事件番号: 昭和43(あ)2394 / 裁判年月日: 昭和44年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法45条前段の併合罪において、異なる種類の刑(懲役と禁錮)を選択した上で刑を併せる場合、同法47条但書の制限を超えて処断することは法令の適用を誤ったものといえる。ただし、宣告刑が不当に重いと認められない限り、直ちに原判決を破棄すべき正義に反する事由(刑訴法411条)には当たらない。 第1 事案の…
実務上の射程
罪数・刑の適用の計算順序(刑法72条)に関する基本判例。実務上、異なる種類の刑(懲役と禁錮)が混在する併合罪の処理において、再犯加重は各罪ごとに検討され、その後に刑の比較・併合が行われるというプロセスを確定させている。
事件番号: 昭和44(あ)194 / 裁判年月日: 昭和44年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法45条前段の併合罪において、各罪につき懲役刑と禁錮刑という異なる種類の刑を選択した場合、刑法47条但書により、処断刑の長期は各罪の法定刑の長期の合計を超えることはできない。 第1 事案の概要:被告人は、業務上過失傷害罪(旧刑法211条前段)と酒酔い運転罪(道路交通法117条の2第1号)を犯した…
事件番号: 昭和44(あ)695 / 裁判年月日: 昭和44年7月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】禁錮刑と懲役刑の併合罪において、刑法47条本文により加重した結果の刑期が、各罪の法定刑の長期を合算した刑期を超える場合には、同条但書を適用してその合算した刑期以下で処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、業務上過失致死傷罪(改正前刑法211条前段)と酒酔い運転罪(道路交通法117条の2第1…
事件番号: 昭和46(あ)1872 / 裁判年月日: 昭和47年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】併合罪のうち一方が禁錮刑、他方が懲役刑である場合に刑法47条本文により加重を行う際は、同条但書の制限が適用され、各罪につき定めた刑の長期の合計を超えることはできない。 第1 事案の概要:被告人は業務上過失致死罪(旧刑法211条前段:最高長期5年)および道路交通法違反(当時の同法118条1項5号:最…
事件番号: 昭和45(あ)1451 / 裁判年月日: 昭和46年4月8日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により刑の変更があった場合には、刑法6条に基づき新旧両法の法定刑を比較し、軽い方の規定を適用しなければならない。行為時に懲役刑の定めがない罪について、法改正後の懲役刑を選択して処断することは法令違反であり、破棄事由に該当する。 第1 事案の概要:被告人は、昭和43年3月13日に業務上過…