判旨
刑法45条前段の併合罪において、各罪につき懲役刑と禁錮刑という異なる種類の刑を選択した場合、刑法47条但書により、処断刑の長期は各罪の法定刑の長期の合計を超えることはできない。
問題の所在(論点)
刑法47条の併合罪加重において、選択された刑の種別が異なる場合であっても、同条但書による「各罪につき定めた刑の長期の合計額」による制限が適用されるか。また、その制限を超えた処断刑を設定した判決の効力が問題となる。
規範
刑法45条前段の併合罪について、刑法47条本文に基づき重い罪の刑にその刑期の2分の1を加えたものを処断刑の長期とする際、同条但書の規定により、その長期は各罪につき定めた刑の長期の合計額を超えることはできない。これは、選択された刑が懲役刑と禁錮刑のように異なる種類であっても同様に適用される。
重要事実
被告人は、業務上過失傷害罪(旧刑法211条前段)と酒酔い運転罪(道路交通法117条の2第1号)を犯した。第一審判決は、前者の罪に禁錮刑、後者の罪に懲役刑を選択した上で、両罪を併合罪(刑法45条前段)とし、同法47条本文により重い方の罪である業務上過失傷害罪の刑に法定の加重をした。その結果、処断刑の長期を禁錮4年6月としたが、これは各罪の法定刑の長期(禁錮3年および懲役1年)を合算した4年を超えていた。原判決もこの誤りを看過して第一審判決を維持した。
あてはめ
本件では、業務上過失傷害罪の長期(禁錮3年)と酒酔い運転罪の長期(懲役1年)の合計は4年である。したがって、刑法47条但書の適用により、処断刑の長期は禁錮4年(刑法48条1項により禁錮として執行)とされるべきである。それにもかかわらず、第一審および原審が禁錮4年6月以下で処断し得るとしたのは、同条但書の解釈を誤り、法令の適用を違背したものであるといえる。もっとも、本件の具体的な宣告刑自体は不当に重いとはいえないため、判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
結論
併合罪加重において、処断刑の長期は各罪の法定刑の長期の合計を超えることはできない。本件判決には法令適用の誤りがあるが、宣告刑が妥当である限り、上告棄却を免れない。
事件番号: 昭和43(あ)2394 / 裁判年月日: 昭和44年2月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法45条前段の併合罪において、異なる種類の刑(懲役と禁錮)を選択した上で刑を併せる場合、同法47条但書の制限を超えて処断することは法令の適用を誤ったものといえる。ただし、宣告刑が不当に重いと認められない限り、直ちに原判決を破棄すべき正義に反する事由(刑訴法411条)には当たらない。 第1 事案の…
実務上の射程
併合罪の処断刑の計算において、刑法47条但書の制限(長期の合計額)は絶対的な上限であることを示す。実務上、異なる刑種(懲役と禁錮)を選択した場合でも合計額の算定が必要であることを喚起する事案。また、形式的な法令適用の誤りがあっても、刑訴法411条等の破棄事由(著しく正義に反する場合)に該当しない限り、直ちに判決が破棄されるわけではない点も重要である。
事件番号: 昭和44(あ)695 / 裁判年月日: 昭和44年7月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】禁錮刑と懲役刑の併合罪において、刑法47条本文により加重した結果の刑期が、各罪の法定刑の長期を合算した刑期を超える場合には、同条但書を適用してその合算した刑期以下で処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、業務上過失致死傷罪(改正前刑法211条前段)と酒酔い運転罪(道路交通法117条の2第1…
事件番号: 昭和46(あ)1872 / 裁判年月日: 昭和47年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】併合罪のうち一方が禁錮刑、他方が懲役刑である場合に刑法47条本文により加重を行う際は、同条但書の制限が適用され、各罪につき定めた刑の長期の合計を超えることはできない。 第1 事案の概要:被告人は業務上過失致死罪(旧刑法211条前段:最高長期5年)および道路交通法違反(当時の同法118条1項5号:最…
事件番号: 昭和45(あ)1222 / 裁判年月日: 昭和45年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に法令適用の誤りがある場合であっても、犯行の態様その他諸般の事情を総合し、当該違法が「著しく正義に反する」と認められないときは、上告棄却を維持すべきである。 第1 事案の概要:被告人は業務上過失傷害罪(第一)および道路交通法違反の各罪(第二ないし第四)を犯した。第一審は、道交法70条の安全運転…
事件番号: 昭和44(あ)557 / 裁判年月日: 昭和44年9月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯罪後の法律により刑の変更があった場合、裁判所は刑法6条及び10条を適用すべきであるが、判決の文脈から改正前の軽い刑を適用したと解される場合は、当該不備は判決に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:被告人が業務上過失傷害罪および道路交通法違反の罪に問われた事案において、第一審判決後、業務上過失傷害…