判決の主文と理由との間にくい違いがあり原判決を破棄しなければ著るしく正義に反するとされた事例
刑訴法411条1号
判旨
判決の理由中で懲役刑を選択し併合罪加重を行ったにもかかわらず、主文で禁錮刑を言い渡すことは、主文と理由の矛盾として破棄事由に該当する。
問題の所在(論点)
判決理由で「懲役刑」を選択し併合罪加重の手続きを説明しながら、主文で「禁錮刑」を言い渡すことが、主文と理由の矛盾として判決の破棄事由となるか。
規範
判決の主文と理由との間に食い違いがある場合、その不一致が著しく正義に反すると認められるときは、刑事訴訟法411条1号に基づき、職権をもって原判決を破棄しなければならない。
重要事実
被告人は酒酔い運転、業務上過失致死、負傷者不救護、事故不申告の罪に問われた。原判決(二審)は、一審判決を量刑不当により破棄して自判するにあたり、理由中では各罪につき懲役刑を選択し、併合罪加重(刑法45条、47条)を経て最も重い業務上過失致死罪の刑により処断すると判示した。しかし、その主文においては「被告人に対し禁錮10月を言い渡す」との宣告を行った。
あてはめ
原判決は、理由において懲役刑を選択し、これに基づき刑法47条の併合罪加重を適用している。それにもかかわらず、主文では性質の異なる禁錮刑を言い渡しており、形式的かつ実質的な論理的一貫性を欠いている。このような主文と理由の明白な矛盾は、裁判の適正を著しく害するものであり、著しく正義に反するものと認められる。
結論
主文と理由に食い違いがあるため、刑訴法411条1号により原判決を破棄し、不利益変更禁止の原則に反しない限度で適正な量刑をさせるため、原裁判所に差し戻すべきである。
実務上の射程
刑事訴訟法上の「判決の矛盾」が著しく正義に反する例を示す。答案上は、罪種(懲役・禁錮)の取り違えのような致命的な形式的誤謬が、職権破棄事由(411条1号)に直結することを確認する際に用いる。また、不利益変更禁止の枠内での更正についても言及されている。
事件番号: 昭和46(あ)1872 / 裁判年月日: 昭和47年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】併合罪のうち一方が禁錮刑、他方が懲役刑である場合に刑法47条本文により加重を行う際は、同条但書の制限が適用され、各罪につき定めた刑の長期の合計を超えることはできない。 第1 事案の概要:被告人は業務上過失致死罪(旧刑法211条前段:最高長期5年)および道路交通法違反(当時の同法118条1項5号:最…
事件番号: 昭和44(あ)695 / 裁判年月日: 昭和44年7月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】禁錮刑と懲役刑の併合罪において、刑法47条本文により加重した結果の刑期が、各罪の法定刑の長期を合算した刑期を超える場合には、同条但書を適用してその合算した刑期以下で処断すべきである。 第1 事案の概要:被告人は、業務上過失致死傷罪(改正前刑法211条前段)と酒酔い運転罪(道路交通法117条の2第1…
事件番号: 昭和45(あ)1222 / 裁判年月日: 昭和45年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に法令適用の誤りがある場合であっても、犯行の態様その他諸般の事情を総合し、当該違法が「著しく正義に反する」と認められないときは、上告棄却を維持すべきである。 第1 事案の概要:被告人は業務上過失傷害罪(第一)および道路交通法違反の各罪(第二ないし第四)を犯した。第一審は、道交法70条の安全運転…
事件番号: 昭和47(あ)1296 / 裁判年月日: 昭和48年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、上告趣意が単なる事実誤認、法令違反、量刑不当の主張にすぎず、刑訴法405条の上告理由に該当しないとして上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:弁護人は、下級審の判断に対し、事実誤認、単なる法令違反、および量刑不当を理由として上告を申し立てた。なお、事案の具体的な犯罪事実等については…