判旨
判決に影響を及ぼさない軽微な事実誤認(事故の態様や示談成立の時期に関する誤り等)は、刑訴法上の適法な上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
原判決に事故態様の細部(前進か後退か)や示談成立時期に関する事実誤認が存在する場合、それが刑訴法上の破棄理由となる「判決に影響を及ぼすべき事実誤認」に該当するか。
規範
控訴審判決に事実誤認がある場合であっても、それが「判決に影響を及ぼすべき」もの(刑訴法382条、411条3号参照)と認められない限り、破棄理由とはならない。
重要事実
被告人が大型トレーラーを運転中に事故を起こした事案において、原判決(控訴審)は、事故が「車両を後退させた際」に生じたと認定し、また「近く示談が成立することが予想される」と判断していた。しかし、記録によれば、実際には事故は「車両を前進させた際」に生じたものであり、かつ原判決当時すでに「示談が成立」していた。
あてはめ
本件における事故態様の前後誤認は、事故の本質的過失や危険性を左右するほどの重大な誤りとはいえず、また示談についても既に成立していたという被告人に有利な事実を「見込み」と表現したに過ぎない。これらの誤認は、判決の結論(量刑や罪責の成否)を左右するほどの実質的な影響力を持つものとは認められない。
結論
本件の事実誤認は、いまだ判決に影響を及ぼすものとは認められないため、上告棄却を免れない。
実務上の射程
事実誤認を理由とする上告・控訴において、単なる細部の誤りではなく、判決の主文や結論の導出過程を揺るがす「影響性」が必要であることを示す。答案上は、認定の誤りを指摘するだけでなく、その誤りが結論(量刑判断の基礎等)にどう波及するかを論じる際の論拠となる。
事件番号: 昭和43(あ)1082 / 裁判年月日: 昭和44年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼすべき事実誤認や法令違反がある場合であっても、結論において正当であると認められるときは、原判決を破棄する必要はない。 第1 事案の概要:被告人が信号無視(赤信号での進入)をしたとして起訴された事案。第一審は被告人の信号無視を認定し、有罪とした。原判決(控訴審)は、第一審の認定を支持…
事件番号: 昭和44(あ)1969 / 裁判年月日: 昭和45年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審判決において第一審判決の解釈に誤りがあり、事実誤認の主張を前提を欠くとして排斥した点に法令違反があるとしても、第一審の事実認定自体が正当であれば判決に影響を及ぼさない。実質的に事案を検討した結果、第一審の認定が証拠に基づき肯定できる場合には、控訴棄却の結論は維持されるべきである。 第1 事案…
事件番号: 昭和47(あ)1296 / 裁判年月日: 昭和48年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、上告趣意が単なる事実誤認、法令違反、量刑不当の主張にすぎず、刑訴法405条の上告理由に該当しないとして上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:弁護人は、下級審の判断に対し、事実誤認、単なる法令違反、および量刑不当を理由として上告を申し立てた。なお、事案の具体的な犯罪事実等については…