判旨
判決書の罪となるべき事実の記載において、表現に不適切な箇所があったとしても、文言を全体として検討した結果、被告人の過失行為と被害者の死傷との間に因果関係が認められると判断できるのであれば、適法な判示として認められる。
問題の所在(論点)
判決書における事実摘示の表現が不適切な場合、それが直ちに判決に影響を及ぼす法令違反となるか。特に、過失行為と死傷結果との結びつきに関する判示の許容範囲が問題となった。
規範
判決書における「罪となるべき事実」の判示に措辞の妥当を欠く点がある場合であっても、判示事項の全体を総合的に観察し、犯罪構成要件に該当する事実関係(過失行為と結果、および両者の因果関係)が認定されていると認められるときは、刑事訴訟法上の法令違反とはならない。
重要事実
被告人が過失行為により、Aほか1名を負傷させ、かつBほか1名を死亡させたとして業務上過失致死傷罪等に問われた事案である。原判決の罪となるべき事実の記載には、その表現(措辞)において妥当を欠く点が含まれていた。
あてはめ
原判決の記載を全体として検討すると、個別の表現に不適切な部分は見受けられるものの、被告人の具体的な過失行為を起点として、被害者らが負傷・死亡に至ったという事実関係が摘示されている。したがって、構成要件に該当する事実は判示されているものと評価できる。
結論
本件上告を棄却する。原判決の判示は、全体として被告人の過失行為と被害者の死傷との因果関係を認めたものと解されるため、適法である。
実務上の射程
判決書の記載に一部不明瞭な点や不適切な表現があっても、文理の全体から構成要件該当性が読み取れるのであれば判決は維持されるという、判示の合理的な解釈の許容範囲を示したものである。答案上は、判決の理由不備や食い違いが主張された際の反論の根拠として機能する。
事件番号: 昭和44(あ)400 / 裁判年月日: 昭和44年6月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】有罪判決における法令の適用の記載に関し、いかなる法令を適用して主文の判断に至ったかが客観的に判明する程度であれば、法条を羅列する形式の記載であっても刑訴法335条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人に対し有罪判決が言い渡された際、第一審判決の「法令の適用」欄において、具体的な適用過程の説示…