第一審判決が証拠の標目に挙げているAの司法巡査に対する供述調は、証拠として請求書も取調べもされておらず、記録中に編綴されてもいないが、右判決の記載は誤記と認めるのが相当であるから、右判決及び原判決に影響を及ぼすものではない。
証拠として請求も取調べもされず記録中に編綴されてもいない供述調書を証拠の標目に掲げた違法と判決への影響
刑訴法411条1号,刑訴法379条,刑訴法335条1項
判旨
第一審判決の証拠標目に請求・取調べがなされていない証拠が記載されていても、それが単なる誤記と認められる場合には、判決に影響を及ぼす法令違反には当たらない。
問題の所在(論点)
証拠調べが行われていない証拠を判決の証拠標目に掲げたことが、判決に影響を及ぼす違法(刑訴法379条、405条等)に該当するか。
規範
判決書の証拠標目に、適法な証拠調べを経ていない証拠が記載されている場合であっても、その記載が客観的な状況に照らして単なる「誤記」と認められるときは、当該不備は判決の結論に影響を及ぼすものではない。
重要事実
第一審判決において、証拠の標目に「Aの司法巡査に対する供述調書」が挙げられていた。しかし、当該調書は実際には証拠として請求も取調べもされておらず、訴訟記録中にも編綴されていなかった。
事件番号: 昭和27(あ)5410 / 裁判年月日: 昭和29年3月16日 / 結論: 棄却
証人Aの供述につき所論のように弁護人の異議申立により排除決定があつたのは、Bからの伝聞事項に関する部分のみであること原判決の説示するとおりである。そして第一審判決が証拠に引用したのは、前記証人の直接見分した事実に関する供述部分であると原審は認めたのであつて、その判断に誤りはない。
あてはめ
本件において、問題となった供述調書は請求も取調べもされておらず、記録上も存在しない。このような状況下での証拠標目への記載は、実質的な証拠採用の誤りではなく、単なる「誤記」と認めるのが相当である。したがって、この誤記は原判決の判断の基礎を左右するものではなく、判決に影響を及ぼすものとはいえない。
結論
本件の記載は誤記と認められ、判決に影響を及ぼすものではないため、上告理由には当たらない。
実務上の射程
判決書における形式的な記載ミスが直ちに破棄事由にならないことを示す。ただし、実質的に取り調べていない証拠を事実認定の基礎とした場合(証拠によらない事実認定)とは厳格に区別して論じる必要がある。
事件番号: 昭和50(あ)1749 / 裁判年月日: 昭和50年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】余罪を量刑の資料として考慮することは、実質的に当該余罪を処罰する趣旨でない限り、憲法31条、38条3項、39条に違反しない。 第1 事案の概要:第一審判決において、被告人の余罪とされる事実が量刑の資料として考慮された。これに対し弁護人は、当該余罪の考慮が憲法31条(適正手続き)、38条3項(自白の…
事件番号: 昭和28(あ)2859 / 裁判年月日: 昭和30年5月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審において量刑不当を理由に第一審判決を破棄自判する場合、控訴審は第一審判決の確定した事実に対して法律を適用すれば足り、改めて事実を摘示することを要しない。 第1 事案の概要:被告人が第一審判決を受けた後、控訴審において第一審判決の事実認定自体には争いがなかった。弁護人は控訴審において単に量刑不…