判決書に判決をした裁判官所属の官署である裁判所の表示がない違法は、判決書に判決裁判所を構成した裁判官全員の署名押印があり、判決裁判所の特定に欠けるところがないときは、判決に影響を及ぼさない。
判決書に判決をした裁判官所属の官署である裁判所の表示がない違法と判決への影響の有無
刑訴規則58条1項,刑訴法411条1号
判旨
判決書に裁判所の表示がないことは刑事訴訟規則58条1項に違反するが、構成裁判官の署名押印があれば、判決裁判所の特定に欠けるところはなく、判決に影響を及ぼす違法とはならない。
問題の所在(論点)
判決書に刑事訴訟規則58条1項が定める「判決をした裁判官の所属の官署」である裁判所の表示を欠くという方式違背がある場合、それが刑事訴訟法411条等の「判決に影響を及ぼすべき法令の違反」に該当し、破棄事由となるか。
規範
判決書の方式違反が判決に影響を及ぼすか否かは、当該違反によって判決の有効性や主体が客観的に不分明となり、訴訟手続の公正や適正を害するに至っているか否かによって判断すべきである。具体的には、形式的な表示に欠落があっても、署名押印等により裁判官の同一性や裁判所の特定が可能であれば、直ちに判決に影響を及ぼす違法とはならない。
重要事実
本件の原判決書には、判決をした裁判官が所属する官署である裁判所の名称が表示されていなかった。一方で、当該判決書には、その判決裁判所を構成した裁判官3名の署名および押印がなされていた。上告人は、裁判所の表示がないことを理由に原判決の違法を主張した。
あてはめ
原判決書に裁判所の名称が表示されていない点は、刑事訴訟規則58条1項に違反する不備である。しかし、判決書には判決を下した裁判官3名が連名で署名押印しており、その主体が客観的に裏付けられている。これにより、どの裁判所がどのような構成で判断を示したかという判決裁判所の特定に欠けるところはないといえる。したがって、形式的な表示の欠落が判決の実質的な正当性を損なうものとは解されない。
結論
本件の瑕疵は判決に影響を及ぼすものとは認められないため、原判決を破棄すべき理由にはあたらない。
実務上の射程
裁判書の方式違反に関する救済の限界を示す事例である。答案上では、軽微な手続違背が直ちに判決を無効・取消しとするわけではなく、署名押印等の他の記載から補完可能であれば、判決の同一性や特定を肯定し、事後的な救済を否定する論拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)2610 / 裁判年月日: 昭和28年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】控訴審が第1審判決を破棄し自判する場合において、第1審の刑と比較して重くなければ不利益変更禁止の原則に反しない。また、訴訟記録や証拠に基づき直ちに判決できると認めるときは、差戻しをせず自ら判決を下すことが可能である。 第1 事案の概要:被告人が控訴した事件において、控訴審(原控訴裁判所)が第1審判…