判旨
控訴審において検察官、弁護人の申請に係る証人尋問及び被告人質問が実施されている場合、たとえ原審が自ら事実認定を行っても、被告人の審級の利益を奪うものではなく憲法31条に違反しない。
問題の所在(論点)
控訴審において証人尋問や被告人質問が行われた場合に、被告人から審級の利益を奪ったものとして憲法31条(適正手続の保障)に違反するか、あるいは刑事訴訟法上の不法があるか。
規範
審級の利益の保障とは、上級審による救済の機会を確保することを指し、控訴審において適切な証拠調べが行われ、当事者に防御の機会が十分に与えられている限り、事実認定の在り方が直ちに審級の利益を不当に奪うことにはならない。
重要事実
被告人が憲法31条違反を主張して上告した事案。具体的には、原審(控訴審)において検察官および弁護人の申請に基づく6名の証人尋問、および被告人本人に対する尋問が実施されていた。弁護人は、このような手続が行われたにもかかわらず、原審の判断が被告人の審級の利益を奪うものであると主張した。
あてはめ
本件記録によれば、原審は検察官・弁護人双方の申請に係る証人6名および被告人本人に対する尋問を行っている。このように、事実解明のための証拠調べが尽くされ、被告人に対しても十分な防御・供述の機会が与えられている。したがって、原審の手続を経てなされた判断は、被告人から審級の利益を奪ったものとは評価できない。
結論
被告人に対し審級の利益を奪ったものではない。したがって、憲法31条違反をいう主張は実質において単なる訴訟法違反の主張にすぎず、適法な上告理由に当たらないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟における「審級の利益」の限界を示す。特に控訴審での事実調べが充実している場合には、審級の利益の侵害は否定されやすい。答案上は、職権による事実取調べや破棄自判の際、審級の利益を侵害しないかという論点に対する、手続的保障(防御権行使の機会)の観点からの反論・補強として活用できる。
事件番号: 昭和41(あ)1634 / 裁判年月日: 昭和42年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所による被告人質問において、あらかじめ供述拒否権等の権利を告知しなかったとしても、直ちに憲法38条1項に違反するものではなく、また当事者主義にも反しない。 第1 事案の概要:原審において、裁判所が被告人に対し、供述拒否権等の被告人の権利を保障するために必要な事項(黙秘権告知など)を事前に告げる…
事件番号: 昭和54(あ)305 / 裁判年月日: 昭和54年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審の訴訟手続において弁護人の訴訟活動に対する不当な制約がない限り、憲法37条1項、3項、31条、32条に違反するとの主張は前提を欠き、上告理由にならない。 第1 事案の概要:被告人が第一審の訴訟手続に関して、弁護人の訴訟活動に不当な制約があったと主張し、それが憲法37条1項、3項、31条、32…