刑法一八条が憲法一三条、一四条に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第一八九〇号、同二五年六月七日大法廷判決、刑集四巻六号九五六頁)の趣旨に徴し明らかである。
刑法第一八条は憲法第一三条、第一四条に違反するか。
刑法18条,憲法13条,憲法14条
判旨
刑法18条が規定する罰金等の完納不能者に対する労役場留置(換刑処分)は、憲法13条、14条に違反せず、また二重処罰を禁じた憲法39条にも違反しない。
問題の所在(論点)
罰金・科料を完納できない者に対して労役場留置を科す刑法18条の規定は、憲法13条(幸福追求権・自由)、14条(法の下の平等)、および39条(二重処罰の禁止)に違反するか。
規範
刑法18条に定める労役場留置は、罰金等の完納不能者に対する特別の執行方法である。これは同一の犯罪について重ねて処罰するものではなく、合理的な執行の確保を目的とする制度であるから、幸福追求権、法の下の平等、および二重処罰の禁止を定めた憲法各条項に抵触しない。
重要事実
被告人は罰金刑に処せられたが、これを完納することができなかった。弁護人は、罰金が払えない場合に労役場に留置される刑法18条の規定が、身体の自由を侵害し(憲法13条)、経済的理由による差別であり(同14条)、かつ同一の犯罪について重ねて処罰するものである(同39条)として、違憲を主張して上告した。
あてはめ
まず、憲法13条および14条違反の主張については、先例の趣旨に照らし、罰金刑の不履行に対する強制的な執行手段として労役場留置を認めることは、刑罰制度の目的を達成するために合理的な範囲内のものであるといえる。次に、憲法39条違反の主張については、労役場留置はあくまで罰金刑という単一の刑罰を実効的に執行するための「特別の執行方法」にすぎない。したがって、罰金刑に加えて別個の刑罰を科す「二重処罰」には該当しないと解される。
結論
刑法18条は憲法13条、14条、39条のいずれにも違反しない。したがって、被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
罰金刑の執行不能時における換刑処分の合憲性を確認した判例である。答案上では、刑罰の執行方法が身体の自由を制約する場合であっても、それが制度上合理的な代替手段(執行方法)と評価される限り、二重処罰や平等原則の観点から直ちに違憲とはならないことを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和29(あ)3879 / 裁判年月日: 昭和30年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法18条が定める罰金・科料の完納不能者に対する労役場留置の規定は、憲法に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が罰金刑を言い渡された際、弁護人が刑法18条(労役場留置)の規定は憲法に違反するものであると主張して上告したが、先行する大法廷判決等(昭和25年6月7日判決等)により、既に合憲性が示され…