一 罰金不完納の場合の労役場留置は、憲法一八条にいう「犯罪による処罰」に当たることは明白であるから、刑法一八条が憲法一八条に違反するとなし得ないことは自から明らかである。 二 刑法一八条が憲法一一条一三条に違反するものでないことも昭和二四年(れ)第一八九〇号、同二五年六月七日大法廷判決(刑集第四巻六号九六一頁)および昭和二三年(れ)第一四二六号、同二四年一〇月五日大法廷判決(刑集三巻一〇号一六四八頁)の趣旨に徴し明らかである。
刑法第一八条の合憲性。
憲法11条,憲法13条,憲法18条,刑法18条
判旨
罰金不完納の場合の換刑処分を定めた刑法18条の規定は、罰金刑の効果を全うするための特別な執行方法であり、憲法18条の「犯罪による処罰」に該当するため、憲法11条、13条、18条に違反しない。
問題の所在(論点)
罰金不完納を理由として労役場留置を命じる刑法18条の規定は、憲法18条の禁ずる「意に反する苦役」や憲法11条・13条の保障する基本的人権を侵害し、違憲とならないか。換刑処分の法的性質と憲法18条但書「犯罪による処罰」との関係が問題となる。
規範
罰金刑は刑法上認められた適法な刑罰の一種であり、刑法18条による労役場留置(換刑処分)は、罰金不完納の場合にその刑罰の効果を実効的なものとするための特別な執行方法である。かかる身分拘束は憲法18条但書にいう「犯罪による処罰」に該当し、人身の自由等の基本権を不当に侵害するものではない。
重要事実
被告人両名に対し罰金刑が科された事案において、被告人側は、罰金を完納できない場合に労役場留置を強制する刑法18条の規定が、基本的人権の尊重(憲法11条)、個人の尊厳(同13条)、および意に反する苦役からの自由(同18条)に反し憲法違反であると主張して上告した。
あてはめ
まず、罰金刑自体が刑法上の適法な刑罰である。その上で、刑法18条が定める換刑処分は、罰金の不完納という事態において刑罰権の行使を完遂するための合理的な執行手段といえる。したがって、これに伴う身体拘束や労役は、憲法18条但書が許容する「犯罪による処罰」そのものの執行過程に含まれる。ゆえに、個人の尊厳や人身の自由を不当に奪うものではなく、憲法11条、13条、18条のいずれにも抵触しない。
結論
刑法18条は憲法11条、13条、18条に違反しない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
換刑処分の合憲性を明示した重要判例である。答案上では、身体の自由を制約する強制処分や刑罰執行の合憲性が問われた際、それが「犯罪による処罰」としての実質(適正手続・合理的根拠)を備えている限り、憲法18条に違反しないとする論理の補強に活用できる。また、金銭刑の実効性確保という立法目的の合理性を肯定する際の根拠となる。
事件番号: 昭和32(あ)483 / 裁判年月日: 昭和32年6月25日 / 結論: 棄却
原判決が被告人の前科(累犯とならないものを含む)を量刑上参酌したからといつて何ら憲法三九条、一四条に違反するものではない。