論旨は、所論業者と接待婦との間に雇用関係があるとした原判決の判断を不当とするのであるが、原判決の判断の正当であることは、さきに当裁判所が職業安定法五条の雇用関係につき判示したところに徴し明らかである(昭和二七年(あ)三六二六号同二九年三月一一日第一小法廷判決参照)。従つて、原判決が雇用関係を認めたことの違法を前提とする憲法第三一条違反の主張は採用できない。
職業安定法第五条にいわいゆる「雇用関係」の意義
職業安定法5条
判旨
多数の違反者が検挙・起訴されない中で、特定の被告人のみが起訴・処罰されたとしても、直ちに憲法14条の法の下の平等に反するものではない。
問題の所在(論点)
多数の違反者が不問に付されている状況下で、特定の者のみを起訴することが、憲法14条が保障する法の下の平等に抵触するか。
規範
検察官による公訴提起の裁量に関し、犯情の類似した被告人間に処罰の差異が生じることは、原則として憲法14条に違反しない。この趣旨は、他の多数の違反者が検挙・起訴されず、特定の被告人のみが起訴・処罰された場合にも及ぶ。
重要事実
被告人は、職業安定法違反(無許可の労働者供給事業等)の罪で起訴された。弁護人は、同様の行為を行っている他の業者が不問に付されているにもかかわらず、被告人らのみを起訴して刑罰を科すことは、憲法14条の平等原則および31条の適正手続に反すると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は過去の判例(最大判昭23.10.6、最二小判昭26.9.14等)を引用し、刑事追訴の有無に差異が生じること自体を不当とはしない立場を再確認した。本件において、他の業者が起訴されていない事実は、被告人らに対する刑事責任の追及を妨げる事情とはならず、平等原則違反の主張は採用できない。また、接待婦との間に職業安定法上の雇用関係を認めた原判断も、従前の判例に照らして正当である。
結論
特定の被告人のみが起訴・処罰されることは憲法14条に違反せず、有罪とした原判決に憲法違反の違法はない。上告棄却。
実務上の射程
検察官の公訴提起に関する広範な裁量を認める判例として重要である。実務上、不平等起訴(選択的起訴)の抗弁を主張する際のハードルの高さを示すものといえる。なお、本判決は差別的な意図に基づく恣意的な起訴までは許容していないと解されるが、具体的な差別的意図の立証がない限り、平等原則違反は認められにくい。
事件番号: 昭和32(あ)483 / 裁判年月日: 昭和32年6月25日 / 結論: 棄却
原判決が被告人の前科(累犯とならないものを含む)を量刑上参酌したからといつて何ら憲法三九条、一四条に違反するものではない。