判旨
刑法18条に基づく労役場留置は、罰金不完納に対する刑の執行に代わるものであり、未決勾留とはその性質を異にする。留置一日の換算率は必ずしも社会の報酬額や貨幣価値に比例させる必要はなく、同条所定の期間内において裁判官の広範な裁量に委ねられている。
問題の所在(論点)
罰金不完納時の労役場留置の換算率(1日あたりの金額)を、未決勾留の換算額や社会の貨幣価値の変動を直接反映せずに裁判官の裁量で決定することは、憲法14条に違反するか。刑法18条の性質と裁判官の裁量権の範囲が問題となる。
規範
刑法18条の労役場留置は、未決勾留とはその性質を異にする。留置一日に相応する金銭的換算率は、必ずしも自由な社会における勤労の報酬額又は貨幣価値の変動に比例して決定されるべきものではなく、同条所定の期間の範囲内(1日以上2年以下、または2日以上3年以下)において、裁判官の裁量に委ねられている。
重要事実
被告人は賍品(盗品)であることを知りながらこれを買い受けた。第一審判決は被告人に対し金3万円の罰金を科し、不完納の場合の労役場留置期間の割合を1日金100円と定めた。これに対し弁護人は、罰金等臨時措置法により未決勾留の換算額が200円に改正されていること等を踏まえ、1日100円とする換算は貨幣価値の変動に反し、憲法14条(法の下の平等)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
労役場留置は、刑の執行に代わるものであり、未決勾留(刑訴法495条等)とは法的性質が異なる。したがって、未決勾留の換算規定である罰金等臨時措置法を当然に適用すべき理由はない。また、換算率は社会の報酬額等に比例すべき必然性はなく、刑法18条が定める期間の範囲内であれば、裁判官が事案に応じて決定できる。本件の1日100円という換算は、法定の期間内における適正な裁量の行使といえる。
結論
本件換算率は憲法14条に違反しない。したがって、原判決の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
労役場留置の換算率に関する裁判官の裁量を肯定した先例。憲法14条違反を争う場面での反論として機能する。実務上は、法定の留置期間(最長2年または3年)を逆算して1日の金額が決定される傾向にあり、本判例はその裁量権の正当性を担保する根拠となる。
事件番号: 昭和25(あ)1367 / 裁判年月日: 昭和26年12月6日 / 結論: 棄却
刑法第一八条の法廷期間の範囲内において罰金不完納の場合における労役場留置の期間を一日幾許と定めるかは、判決裁判所の裁量に属する。