刑法第一八条の法廷期間の範囲内において罰金不完納の場合における労役場留置の期間を一日幾許と定めるかは、判決裁判所の裁量に属する。
罰金不完納の場合における労役場留置期間の換算率
刑法18条
判旨
罰金未納付時の労役場留置日数の換算規準は、未決勾留日数を本刑に算入する場合の換算規準と異なり、刑法18条1項の範囲内で裁判官の自由裁量に委ねられている。
問題の所在(論点)
罰金を完納できない場合の労役場留置日数を定めるにあたり、裁判官は未決勾留日数の金銭換算規準に拘束されるか。刑法18条1項に基づく換算規準決定の裁量の有無が問題となる。
規範
未決勾留日数を金員に換算する法定通算の規準(刑事訴訟法495条3項等)は、既執行の日数を事後的に金額へ換算する標準を定めたものである。これに対し、罰金未納時の労役場留置日数の規準(刑法18条1項)は、将来の不納に備えて金額を日数に換算する規準をあらかじめ判決で定めるものである。後者については、法律が「1日以上2年以下」という期間の範囲内において、裁判官が自由な裁量によりその換算額を決定することを認めている。
重要事実
被告人に対し罰金刑が科され、あわせて罰金を完納できない場合の労役場留置日数の換算規準が言い渡された事案。弁護人は、刑事訴訟法495条3項(および罰金等臨時措置法7条4項)が定める未決勾留日数の換算規準(当時1日200円)と、本件の労役場留置の換算規準が均衡を欠くことは不当であり、両者には同一の規準を適用すべきであるとして上告した。
あてはめ
未決勾留日数の換算は、当局者(執行者)に裁量の余地を認めない数学的な法定通算である。一方、労役場留置は、刑法18条1項が「一日以上二年以下」と明文で期間の幅を定めており、その範囲内であれば裁判官の裁量判断が尊重される。立法論として両者の規準を同一にすることに合理性があるとしても、現行法上、裁判官が未決勾留の換算規準に拘束される法的根拠はない。
結論
労役場留置の換算規準を裁判官の裁量により定めた原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
罰金刑の言渡しに付随する労役場留置(刑法18条)の裁量権を認めた判例である。答案上は、罪刑法定主義や平等原則(憲法14条)との関係で換算規準の妥当性が争点となる場面において、未決勾留の算入規準との性質の違いを説明する際に活用できる。
事件番号: 昭和28(あ)97 / 裁判年月日: 昭和29年7月6日 / 結論: 棄却
罰金を完納することができない場合の労役場留置期間を言渡すにあたり、一定の日数をもつて右期間を定めても、刑法第一八条に則つている以上、違法ではない。