原判決が刑法所定の範囲内で被告人に対し金千円の罰金不完納の場合の労役場留置期間の割合を一日金五〇円と定めたことが憲法第三六条その他国民の基本的人権を保障した憲法の条規に違反しないこと当裁判所大法廷判例の趣旨に徴し明らかである。(昭和二三年(れ)第二八一号同二五年二月一日同二三年(れ)第一四二六号同二四年一〇月五日各大法廷判決参照)
金千円の罰金不完納の場合の労役場留置期間の割合を一日金五〇円とすることの合憲性
刑法18条,憲法38条
判旨
罰金不完納時の労役場留置は刑の執行に準ずるものであり、その換算率は貨幣価値の変動に比例して決定されるべき性質のものではなく、裁判官の広範な裁量に委ねられる。
問題の所在(論点)
刑法18条に基づく労役場留置の換算率の決定は、貨幣価値の変動等に拘束されるか。また、裁量により定められた換算率が憲法36条等に違反するか。
規範
罰金不完納の場合の労役場留置(刑法18条)は刑の執行に準ずる性質を有し、留置一日に相応する金銭的換算率は、自由社会における勤労の報酬額や貨幣価値の変動に比例して決定されるべきものではない。換算率は、刑法18条の定める範囲内において、裁判官の裁量により決定される。
重要事実
被告人に対し金1000円の罰金が言い渡され、不完納の場合の労役場留置期間の割合を「1日につき金50円」と定められた。被告人側は、この換算率が貨幣価値の変動を考慮しておらず、憲法36条の残虐な刑罰の禁止や基本的人権の保障に違反すると主張して上告した。
あてはめ
労役場留置は、罰金の代替的な刑の執行という性格を有するため、市場の報酬相場とは切り離して考えるべきである。原判決が刑法18条の規定する期間の範囲内で、1日あたり50円という換算率を定めたことは、同法の趣旨に照らして裁判官の適正な裁量の範囲内にあるといえる。したがって、この算定が残虐な刑罰にあたるとか、基本的人権を侵害するものとは解されない。
結論
罰金1000円不完納時の労役場留置換算率を1日50円と定めた原判決は、刑法18条及び憲法に違反しない。
実務上の射程
労役場留置の換算率が経済情勢に直接拘束されないという判断の枠組みを示す。今日では罰金刑の言い渡しと同時に留置の換算額を定めるのが実務であり、著しく低額で長期間の拘束を強いるような裁量権の逸脱がない限り、憲法・刑法上の問題は生じないとする論証に活用できる。
事件番号: 昭和25(れ)1763 / 裁判年月日: 昭和26年5月11日 / 結論: 棄却
所論は未決勾留日数の法定通算に関する罰金等臨時措置法第七条四項を援用するけれども、未決勾留日数の法定通算と罰金不完納の場合における労役場留置とは必ずしも同列に断ずることを得ないばかりでなく本件犯行は同法施行前の行為にかかり、従つて本件犯行に対する罰金額は金千円を超えることを得ないのであるから原判決が労役場留置期間の割合…