原判決が被告人の前科を量刑上参酌したからといつて何ら憲法三九条に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判決(昭和二四年(れ)第一二六〇号、同年一二月二一日宣告、刑集三巻一二号二〇六二号)の趣旨に照らし明らかである。
前科を量刑上参酌することと憲法第三九条。
刑法56条,刑法57条,憲法39条
判旨
被告人の前科を量刑上の事情として参酌することは、憲法39条後段が禁止する「二重の処罰」には当たらず、合憲である。
問題の所在(論点)
量刑において被告人の前科を参酌することが、憲法39条が禁止する「一事不再理」および「二重の処罰の禁止」の原則に抵触するか。
規範
憲法39条後段は、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問われることを禁止するものである。しかし、新たな犯罪の成立を前提として、その刑を決定する(量刑)に際し、被告人の性格、経歴、犯罪の傾向等の情状の一環として前科を考慮することは、前科に係る罪について再び処罰を科すものではない。したがって、前科の参酌は同条に違反しない。
重要事実
被告人が刑事事件により起訴された際、原審は被告人の量刑を判断するにあたり、被告人の過去の犯罪歴(前科)を参酌して刑を言い渡した。これに対し、弁護人は、既に刑罰を受けた前科を再び量刑上考慮することは、憲法39条が禁じる二重処罰にあたるとして上告した。
あてはめ
憲法39条の趣旨は、確定した判決がある場合に同一の犯罪について重ねて刑事責任を追及されることから国民を保護する点にある。本件において、原審が前科を考慮したのは、被告人が犯した新たな犯罪に対する刑の重さを決定するための性格的・経歴的情状としてであり、前科そのものを再び処罰したわけではない。先行する大法廷判決の趣旨に照らせば、このような量刑上の参酌は、二重処罰の禁止には抵触しないと解される。
結論
被告人の前科を量刑上参酌したからといって、憲法39条に違反するものではないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法上の量刑判断における事実認定および憲法39条の解釈において、前科が「情状」として許容されることを明示した射程の広い判例である。答案上では、累犯加重(刑法56条等)の合憲性や、量刑における悪性格の立証の許容性を論ずる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和30(あ)1559 / 裁判年月日: 昭和30年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑の判断において被告人の前科等を考慮することは、第一審における量刑が相当である理由を説明するための要素にすぎず、憲法39条が禁止する二重処罰には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が犯した罪に対し、第一審が量刑を決定した。その際、被告人の前科等の事情が考慮された。これに対し弁護人は、前科を考慮…