一 被告人が郵送頒布した原判示のA選挙事務所開設御案内なる葉書が法定外の文書図画の頒布の禁止を免れる行為に当る旨の原判示は正当である。 二 (原判決の要旨)被告人が相被告人Bと共謀のうえ、C外二六名に対し郵送して頒布した文書は通常葉書に「A選挙事務所開設御案内」と題し「六月二日の参議院選挙に全国区から立候補しました自由民主党公認Aの移動事務所を左記に依り開設致しますので御案内申し上げます 記 期間五月27日〜22日 場所津島市abD様方 参議院全国区自由民主党公認候補A選挙事務所」と謄写版刷りで記載したものであるが、右記載の内、A、全国区の文字は太目で大きく記載してあること、C外二六名はBの単なる知合に過ぎず特に通知する必要がなかつたこと、従つてC外二六名の殆んどは投票依頼の趣旨で郵送されたものと考えたこと、被告人及びBはAの選挙運動員であつたことを認めることができるから前記葉書を郵送したのは立候補者Aの選挙運動のためであつたと認めるのが相当である。
公職選挙法第一四二条の禁止を免れる行為として公職の候補者の氏名を表示した文書を頒布したものにあたる事例
公職選挙法146条,公職選挙法142条
判旨
選挙事務所開設の案内という形式を採る文書であっても、その内容や態様が公職選挙法上の法定外文書図画の頒布禁止を免れる目的でなされた場合には、同法違反(脱法行為)が成立する。
問題の所在(論点)
「選挙事務所開設の案内」という形式の文書を頒布する行為が、公職選挙法における「法定外の文書図画の頒布の禁止を免れる行為」に該当するか。
規範
公職選挙法(本判決当時は146条1項等)が禁止する法定外の文書図画の頒布にあたるか否かは、文書の形式的名称にかかわらず、その内容、頒布の時期、方法等の諸般の事情に照らし、実質的に選挙運動にわたるもの、あるいは制限を免れる行為(脱法行為)と認められるかによって判断すべきである。
重要事実
被告人は、「A選挙事務所開設御案内」と題する葉書を郵送頒布した。この文書の頒布行為について、検察官は法定外の文書図画の頒布を禁止する規定を免れる行為に該当するとして起訴した。原審は、当該葉書の頒布が脱法行為にあたると認定して有罪としたため、被告人側が事実誤認等を理由に上告した。
あてはめ
本件葉書は「選挙事務所開設御案内」という形式を採っている。しかし、その内容や頒布の態様を検討すると、単なる事務所開設の通知にとどまるものではない。実質的には、法定外の文書図画の頒布制限を潜り抜けて選挙運動の効力を奏させようとする意図・実体を有する。したがって、形式にかかわらず公職選挙法の禁止制限を免れる行為(脱法行為)に該当すると判断される。
結論
被告人が郵送頒布した「A選挙事務所開設御案内」なる葉書は、法定外の文書図画の頒布の禁止を免れる行為に当たり、公職選挙法違反が成立する。
実務上の射程
選挙運動に関する規制を潜脱する「脱法行為」の認定手法を示す。形式的に「挨拶状」や「案内状」の体裁を採っていても、実質的な選挙運動性や規制潜脱の意図が認められれば違法となるため、事案の個別事実(文書の文言、頒布数、時期など)を具体的に摘示して評価する際の論拠となる。
事件番号: 昭和36(あ)1675 / 裁判年月日: 昭和36年11月10日 / 結論: 棄却
「選挙事務所開き御通知」と題し、「早春の候同志各位には益々御清祥大慶に存じます。扨て県会議員選挙もいよいよ四月八日告示となりますが、選挙戦に先立ち左記により事務所開きを行いますので、万障お繰合せ同志多数御誘いの上御出席賜り度御案内申し上げます。」と記載した文書は、公職選挙法第一四二条の選挙運動のために使用する文書にあた…