「選挙事務所開き御通知」と題し、「早春の候同志各位には益々御清祥大慶に存じます。扨て県会議員選挙もいよいよ四月八日告示となりますが、選挙戦に先立ち左記により事務所開きを行いますので、万障お繰合せ同志多数御誘いの上御出席賜り度御案内申し上げます。」と記載した文書は、公職選挙法第一四二条の選挙運動のために使用する文書にあたる。
公職選挙法第一四二条の選挙運動のために使用する文書にあたる事例。
公職選挙法142条1項,公職選挙法243条3号
判旨
選挙事務所開きの通知文書が、その外形および内容から客観的に判断して選挙運動のために使用されるものと認められる場合には、公職選挙法上の制限を受ける文書に該当する。
問題の所在(論点)
公職選挙法における文書頒布制限等の対象となる「選挙運動のために使用する文書」の該当性をいかなる基準で判断すべきか、また「選挙事務所開きの通知」という形式の文書がこれに当たるかが問題となった。
規範
文書が選挙運動のために使用されるもの(公職選挙法上の文書頒布制限等の対象)に該当するか否かは、当該文書の文言、形式等の外形および内容自体から客観的にみて、選挙運動のために使用する目的をもって作成・頒布されたものと認められるかという観点から判断すべきである。
重要事実
被告人Aは、県議会議員選挙の告示前に「選挙事務所開き御通知」と題する文書を頒布した。当該文書には、選挙事務長名義で、告示日の明示とともに「選挙戦に先立ち事務所開きを行うので、同志多数お誘いの上出席されたい」旨が記載されていた。これに対し、被告人側は当該文書が法に抵触しない旨を主張して上告した。
あてはめ
本件文書は「選挙事務所開き御通知」と題され、告示日を明記した上で「選挙戦に先立ち」事務所開きへの出席を促す内容となっている。このような記載内容は、単なる儀礼的な通知の域を超えており、その外形および内容自体からみて、客観的に選挙運動のために使用する文書であると認めるのが相当であると判断される。
結論
本件文書は選挙運動のために使用する文書に該当する。したがって、これに係る公職選挙法違反を認めた原判決は正当であり、上告は棄却される。
実務上の射程
公職選挙法上の「選挙運動」の認定において、名目や形式が「事務所開き」や「挨拶」であっても、その客観的内容から選挙運動性が肯定されるという実務上の規範を示している。答案上は、目的の主観だけでなく、文書の記載内容という客観的事実から「選挙運動」該当性を導く際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和46(あ)180 / 裁判年月日: 昭和47年10月6日 / 結論: 棄却
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