一 被告人の本件所為をもつて法定外文書の頒布及び事前の選挙運動に当るとした原判示は正当である。 二 註、本件犯罪事実の要旨被告人は昭和三四年四月三〇日施行された東京都青梅市議会議員選挙に立候補したものであるが右選挙に際し自己に当選を得る目的をもつて未だ立候補届出のない四月一四日頃から同月一七日までの間同選挙の選挙人二〇名に対し青梅市議会議員候補Aほか一名名義をもつて「私たちの提案」なる表題の下に右選挙に関する評論を記載した法定外の文書二一枚位及び自己の写真と経歴を掲載した「経歴書」と題するA名義の法定外文書一九枚位を……頒布したもの。
事前の選挙運動および法定外文書の頒布にあたる事例
公職選挙法142条1項,公職選挙法243条3号,公職選挙法129条,公職選挙法239条1号
判旨
公職選挙法による法定外文書の頒布禁止および事前運動の禁止規定は、憲法21条に違反せず、言論の自由を不当に侵害するものではない。
問題の所在(論点)
公職選挙法における「法定外文書の頒布禁止」および「事前運動の禁止」の各規定が、憲法21条の表現の自由を侵害し違憲といえるか。
規範
公職選挙法が定める選挙運動に関する規制(法定外文書の頒布禁止や事前運動の禁止等)は、選挙の公正を確保し、過熱した運動による弊害を防止する公共の福祉に基づく合理的な制限であり、憲法21条の表現の自由を不当に侵害するものではない。
重要事実
被告人は、公職選挙法において認められていない文書(法定外文書)を頒布し、かつ、公示前という禁止された時期に選挙運動(事前運動)を行ったとして、同法違反の罪に問われた。被告人側は、これらの規制が表現の自由を保障する憲法21条に違反し違憲であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、被告人の行為が法定外文書の頒布および事前の選挙運動に当たるという原審の判断を正当とした。その上で、これらの規制が憲法21条に違反するという主張については、実質的に原判決の認定に副わない主張を前提とするものであるか、あるいは単なる法令違反の主張に過ぎないと判断し、憲法違反の存在を否定した(具体的な判断枠組みの詳細は判決文からは不明だが、先行する判例の趣旨を維持したものと解される)。
結論
公職選挙法による文書頒布および事前運動の規制は憲法21条に違反せず合憲である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
選挙運動規制の合憲性を肯定した初期の判例の一つ。答案上は、選挙の公正という「公共の福祉」による表現の自由の制限が認められる論拠として活用できるが、現代の判例法理(猿払事件や堀越事件等)における目的・手段審査の枠組みと比較すると、本判決は抽象的な合憲判断に留まっている点に留意が必要である。
事件番号: 昭和36(あ)2474 / 裁判年月日: 昭和37年5月29日 / 結論: 棄却
一 被告人の本件所為をもつて法定外文書の頒布に当るとした原判示は正当である。 (原判決の要旨) 二 本件文書(何れもビラ)は横約四〇糎、縦約一二〇糎の白地の洋紙に「期必勝A」と墨書(但し◎及びふりがなは朱書)したもので、文書の外形、内容自体(特に候補者の姓名にふりがなまで附して表示している点)からみて選挙運動に使用する…