昭和三三年五月二二日に施行された衆議院議員総選挙に際し兵庫県第二区から立候補した塩田賀四郎のため選挙運動をするにあたり、公職選挙法第一四三条所定の文書図画の掲示の禁止を免れるため、東京都第一区より立候補した被告人の選挙運動用ポスターを利用し、タブロイド型用紙の右半分に「革新自由民主党」、左半分に「革新自由民主党幹事長塩田賀四郎」等と大書し、左端に「掲載責任者東京都千代田区神田錦町一ノ一肥後亨」と小さく記載した東京都選挙管理委員会の検印ずみのポスター一五七五枚を、右選挙運動の期間中、兵庫県第二区内に掲示する所為は、公職選挙法第一四六条にいう禁止を免れる行為にあたる。
公職選挙法第一四六条にいう文書図画の提示につき禁止を免れる行為にあたる事例。
公職選挙法146条,公職選挙法243条5号
判旨
選挙運動期間中に法定外のポスターを掲示する行為は、公職選挙法の定める文書図画の掲示制限を免れる行為に該当し、同法違反となる。
問題の所在(論点)
法定外のポスター(文書図画)を掲示する行為が、公職選挙法第143条等による文書図画の掲示制限を「免れる行為」として、同法第146条等の禁止規定に抵触するか。
規範
公職選挙法に基づき、選挙運動のために使用する文書図画の掲示は厳格に制限されている。法定の規格や態様、枚数等に従わない文書図画を掲示する行為は、たとえ脱法的な意図や形式を採っていたとしても、実質的に掲示の禁止を免れる目的で行われるのであれば、法違反を構成する。
重要事実
被告人が選挙運動期間中に、公職選挙法で認められていない形式のポスター(法定外の文書図画)を掲示したが、これが同法の定める掲示禁止の規定を免れる行為に該当するかが争われた。判決文にはポスターの具体的な枚数や内容、掲示場所の詳細については記載されていない。
あてはめ
本件ポスターは法定外の文書図画であり、その掲示行為は、形式的にどのような名目であっても、選挙運動の実質を有するものである限り、法定の制限を潜脱するものと認められる。したがって、本件掲示をもって法定外の文書図画の掲示禁止を免れる行為に当たるとした原判決の判断は正当である。
結論
本件ポスターの掲示は、法定外の文書図画の掲示禁止を免れる行為に該当し、公職選挙法違反となる。
実務上の射程
公職選挙法における「脱法行為」の認定について、原審の判断を維持した極めて簡潔な判決である。答案上は、選挙運動の公正を確保するための文書図画規制の実効性を担保する趣旨で、潜脱的な掲示行為が厳格に処罰対象となることを示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和36(あ)2474 / 裁判年月日: 昭和37年5月29日 / 結論: 棄却
一 被告人の本件所為をもつて法定外文書の頒布に当るとした原判示は正当である。 (原判決の要旨) 二 本件文書(何れもビラ)は横約四〇糎、縦約一二〇糎の白地の洋紙に「期必勝A」と墨書(但し◎及びふりがなは朱書)したもので、文書の外形、内容自体(特に候補者の姓名にふりがなまで附して表示している点)からみて選挙運動に使用する…