公職選挙法第一四四条第二項に規定する証紙を一度ポスターにはつた後これを他のポスターにはりかえる等の行為は許されないものと解すべきである。
公職選挙法第一四四条第二項に規定する証紙の転用は許されるか。
公職選挙法144条2項,公職選挙法142条
判旨
公職選挙法144条2項の証紙を一度ポスターに貼付した後に他のポスターへ貼り替える等の行為は許されず、証紙を転用する可能性がある段階でのポスター頒布行為であっても、同法142条の違反罪が成立する。
問題の所在(論点)
公職選挙法144条2項の証紙を貼り替えて使用する行為の適否、および、証紙を転用する可能性のある状態でのポスター頒布行為が同法142条違反(文書図画の頒布制限違反)を構成するか。
規範
公職選挙法144条2項に規定する証紙は、一度ポスターに貼付した後は、これを他のポスターに貼り替える等の行為をしてはならない。同法の規定に反するポスターの頒布行為は、単なる掲示の準備行為にとどまるものではなく、法142条違反の罪を構成する。
重要事実
被告人らは、選挙運動のために使用するポスターに、同法144条2項に基づき交付された証紙を貼付した。しかし、その証紙は一度他のポスターに使用されたものを貼り替えるなど、証紙の転用が可能な状態、あるいは転用を伴う態様でポスターを頒布した。被告人らは、このような行為は掲示の準備行為にすぎず、犯罪を構成しないと主張して争った。
あてはめ
証紙制度は選挙運動の公平性を確保するためにポスターの数量を制限する趣旨である。一度使用した証紙を他のポスターに貼り替える行為(転用)を認めると、実質的に制限枚数を超えたポスターの頒布が可能となり、法の趣旨を没却する。したがって、証紙の貼り替え等の行為は許されない。本件において被告人らが行ったポスターの頒布行為は、たとえ将来の掲示に向けた準備の側面があったとしても、法が禁じる態様での頒布にあたる以上、直ちに法142条違反が成立すると解される。
結論
被告人らの行為は公職選挙法142条に違反し、有罪とした原審の判断は正当である。
実務上の射程
選挙運動における文書図画の制限に関する重要判例。証紙の「一度きりの使用」という不可逆性を明示しており、実務上、証紙の貼り替えや流用を伴う頒布行為は、形式的に証紙が貼付されていても「有効な証紙の貼付」とは認められず、処罰対象となることを示す指針となる。
事件番号: 昭和35(あ)2366 / 裁判年月日: 昭和36年3月14日 / 結論: 棄却
昭和三三年五月二二日に施行された衆議院議員総選挙に際し兵庫県第二区から立候補した塩田賀四郎のため選挙運動をするにあたり、公職選挙法第一四三条所定の文書図画の掲示の禁止を免れるため、東京都第一区より立候補した被告人の選挙運動用ポスターを利用し、タブロイド型用紙の右半分に「革新自由民主党」、左半分に「革新自由民主党幹事長塩…