一 所論速度の如きは被告人の自白のみを以て認定しても差支ない。 二 (原判決の要旨)本件現場附近による自動三輪車の速度(註、時速約二五粁)について被告人は検察官に対する供述調書において明らかに原判決に副う供述をし又原審公判においてこれを認めており、従来本件自動三輪車の運転経験を有する被告人が自己の運転する同車の速度について供述しているところに措信し得るものがあると認めるのは当然である。
自動三輪車の速度と被告人の自白。
憲法38条3項,刑訴法319条2項
判旨
車両の速度については、被告人の自白のみをもって認定しても刑事訴訟法319条2項に反せず、補強証拠を必要としない。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法319条2項において、被告人の自白のみで認定できない「罪」の範囲(補強証拠を必要とする範囲)に、車両の速度等の細部的事項が含まれるか。
規範
刑事訴訟法319条2項が補強証拠を必要とする趣旨は、自白の真実性を担保し、架空の犯罪に対する処罰を防止する点にある。したがって、犯罪事実の主要な部分(客観的犯罪構成要件の核心部分)に自白がある場合、これと合致する補強証拠があれば足り、速度のような細部的事項については、自白のみによる認定も許容される。
重要事実
被告人が運転する車両の速度について、原審において被告人の自白のみに基づき認定がなされた事案。弁護人は、速度の認定に補強証拠がないことは訴訟法違反であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁は、速度のような事項については被告人の自白のみをもって認定しても差し支えないとの判断を示した。これは、速度自体は独立した犯罪事実の存否に関わる核心部分ではなく、事実認定の細部にとどまるため、自白の真実性担保という補強法則の目的を害さないと評価したものと解される。
結論
本件上告は棄却される。車両の速度については、被告人の自白のみをもって認定することができる。
実務上の射程
自白の補強証拠が必要な範囲を画定する際の判断基準として利用される。具体的には、犯罪の基本的事実(罪体の客観的部分)には補強証拠が必要だが、犯行の態様、手段、速度、日時、場所といった個別の細部については、自白のみによる認定が許容される場合があることを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和35(あ)887 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
一 刑訴第三二一条第三項所定の書面には捜査機関が任意処分として行う検証の結果を記載したいわゆる実況見分調書も包含する。 二 刑訴第三二一条第三項は憲法第三七条第二項前段に違反しない。