一 弁護人の上告趣意は、事実誤認の主張を出でないものであつて刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また同四一一条を適用すべきものとは認められない。 二 (原判決の要旨)第一審判決は、Aの証言を説示の如き理由の下に排斥しているけれども、成程同人は当時僅か年歯六歳であつて智能程度も低く、又本件自故は瞬間的の出来事であるからその供述内容を全面的に信用することは無理であり、又供述の一部には他からの影響によるものもあるかも知れない。しかし同人は被害者Bが郵便ポストの所に立つていて、そのとき駅の方からトラツクが来て四つ角を左折し浜の方に行つた直ぐ後にBが転んでいたこと、その車は車輪が四個あり車体は青色であつたことについては検察官に対する供述以来、原審及び当審の証人尋問に至るまで終始一貫供述しているのであつて、同人は何と云つても本件自故直後における最初の目撃者であり、純真な子供のことであり故らに事実を曲げて供述しているものとは到底考えられないから、詳細微妙の点については不確実なものがあるにしても少くとも右の部分については信用してよいものと考えられる。
六歳の児童の証言を証拠に採用した事例
刑訴法143条,刑訴法318条
判旨
最高裁判所は、弁護人が主張する事実誤認は刑事訴訟法405条所定の上告理由に該当せず、また同法411条を適用して職権で判決を取り消すべき事由も認められないとして、上告を棄却した。
問題の所在(論点)
被告人が主張する「事実誤認」が刑事訴訟法405条の上告理由に該当するか、また、同法411条を適用して原判決を職権で破棄すべき事情が存在するか。
規範
刑事訴訟法405条は上告理由を憲法違反や判例違反に限定しており、単なる事実誤認の主張は適法な上告理由とはならない。また、同法411条による職権破棄は、判決に影響を及ぼすべき著しい事実誤認があるなど、著しく正義に反すると認められる場合に限られる。
重要事実
被告人側(弁護人)が、原判決には事実誤認があるとして最高裁判所に上告を申し立てた事案。判決文からは具体的な事件の内容や、どのような事実誤認が主張されたかの詳細は不明である。
あてはめ
弁護人が主張する内容は、実質的には原判決の認定した事実を争う「事実誤認」の主張にすぎない。これは刑事訴訟法405条が定める憲法違反や判例違反のいずれにも該当しない。さらに、記録を精査しても、同法411条を適用して原判決を破棄しなければ著しく正義に反するといえるような特段の事情は認められない。
結論
本件上告は刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないため、同法414条、386条1項3号により棄却される。
実務上の射程
本決定は、上告審における事実誤認主張の限界を再確認するものである。司法試験の答案作成においては、上告理由が405条各号に限定されていること、および事実誤認は原則として上告理由にならず、職権破棄事由(411条)の存否のみが問題となるという手続的枠組みを示す際に参照される。
事件番号: 昭和49(あ)1466 / 裁判年月日: 昭和51年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実誤認または単なる法令違反の主張は、刑事訴訟法405条に規定される適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、被告事件について事実誤認および単なる法令違反を主張して上告を申し立てた。 第2 問題の所在(論点):事実誤認や単なる法令違反の主張が、刑事訴訟法405条の上告事由として認め…