論旨は、原判決の言い渡した補導処分は帰するところ拘留であり人によつては苦役を課せられるに等しいものであるから、原判決は憲法一八条に違反すると主張する。けれども原判事の勧誘行為は売春防止法五条に該当するので原判決は主文の通り懲役刑およびその執行猶予を言い渡すに際し売春防止法一七条に従い補導処分に対する言渡をしたものであるところ、同条によれば、補導処分はこれに付された女子を婦人補導院に収容しその更正のために必要な補導を行うものであるから、これを勾留または拘留同様のものであるとする独自の前提に立つ違憲の所論は前提を欠き採用することができない。
売春防止法第一七条による補導処分と拘留。
売春防止法17条,刑訴法60条
判旨
売春防止法17条に基づく補導処分は、女子を婦人補導院に収容して更生のために必要な補導を行うものであり、刑罰である拘留等とはその性質を異にするため、憲法18条が禁ずる「苦役」には当たらない。
問題の所在(論点)
売春防止法17条に規定される補導処分が、収容を伴うものであることから、憲法18条が禁ずる「意に反する苦役」に該当し違憲とならないか。
規範
憲法18条が禁ずる「その意に反する苦役」とは、刑罰やそれに類する強制的な労働を指すが、対象者の更生を目的とした教育的・保護的な処遇は、その性質上これに該当しない。
重要事実
被告人は売春防止法5条に該当する勧誘行為を行い、原審において懲役刑の執行猶予とともに、同法17条に基づき婦人補導院への収容を命ずる補導処分を言い渡された。これに対し被告人側は、補導処分は実質的に拘留と同じであり、意に反する苦役を課すものであるとして憲法18条違反を主張し上告した。
あてはめ
売春防止法17条によれば、補導処分は女子を婦人補導院に収容するものであるが、その主たる目的は「更生のために必要な補導を行うこと」にある。これは犯罪に対する制裁として科される刑罰(勾留や拘留)とは性質を異にする更生・保護のための措置である。したがって、身体の自由に対する一定の制限を伴うとしても、直ちに「苦役」を課したものと評価することはできない。
結論
補導処分は更生を目的とするものであり、憲法18条に違反しない。
実務上の射程
人身の自由を制限する行政処分や保護処分について、その目的が更生や教育にある場合には、刑罰と同様の評価をせず、憲法18条違反を否定する判断枠組みとして活用できる。ただし、本判決は補導処分の合憲性を簡潔に肯定したものであり、具体的な処遇内容が過酷な場合の限界については示されていない点に留意が必要である。
事件番号: 昭和36(あ)637 / 裁判年月日: 昭和36年7月14日 / 結論: 棄却
売春防止法第一二条の規定は、憲法第二二条に違反しない。