判旨
最高裁判所は、刑訴応急措置法18条1項に規定される憲法違反等の特別の理由がある場合に限り、下級裁判所の決定に対する抗告を受理する権限を有する。憲法上の判断を含まない再審請求棄却決定に対する抗告は、同項の要件を欠き不適法である。
問題の所在(論点)
刑訴応急措置法18条1項に基づく最高裁判所への抗告において、原決定が憲法上の判断を一切示さず、単に再審事由の存否のみを判断している場合に、当該抗告は適法といえるか。
規範
最高裁判所は、裁判所法7条に基づき、訴訟法により特に認められた場合に限り抗告の裁判権を有する。刑訴応急措置法18条1項に基づく抗告が適法となるためには、原決定に憲法上の判断が含まれているか、あるいは同項所定の憲法違反等の事由が存在することが必要である。
重要事実
抗告人は、原裁判所がなした再審請求棄却決定に対し、旧刑事訴訟法510条に基づいて抗告を申し立てた。原裁判所の決定内容は、抗告人が主張する再審の理由は旧刑訴485条所定の再審請求理由に該当しないというものであった。この原決定の中には、憲法上の判断は一切含まれていなかった。
あてはめ
本件抗告において、原決定は抗告人の再審請求理由が旧刑訴485条に該当しないと判断したに留まり、憲法上の判断を示していない。最高裁判所が抗告について裁判権を有するのは、法律により特に定められた場合に限られるところ、本件は刑訴応急措置法18条1項が定める「憲法上の判断」等の要件を欠いているといえる。したがって、本件抗告は適法な抗告の要件を満たさないと解される。
結論
本件抗告は、刑訴応急措置法18条1項所定の要件を欠くため、不適法として棄却されるべきである。
実務上の射程
事件番号: 昭和39(し)90 / 裁判年月日: 昭和40年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧法下で終結した事件の再審請求に対する高等裁判所の決定については、旧刑訴法及び刑訴応急措置法が適用され、最高裁判所への即時抗告は許されず、憲法違反等の事由がある場合の特別抗告のみが認められる。 第1 事案の概要:本件は、旧旧刑訴法の下で公訴が提起され、かつ終結した強盗殺人事件である。これに対する再…
最高裁判所に対する抗告(特別抗告を含む)の可否を論じる際、原決定における憲法判断の有無が門前払いの基準となることを示す事案である。再審請求棄却決定のような訴訟手続上の決定であっても、憲法問題を含まない限り最高裁への抗告は制限されるという実務上の運用を裏付ける。
事件番号: 昭和34(す)325 / 裁判年月日: 昭和34年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審請求棄却決定に対する即時抗告を棄却した高等裁判所の決定に対し、最高裁判所へ上告または抗告を申し立てることは、法律に特別の規定がない限り不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、大正時代に有罪判決が確定した事件につき、昭和32年に再審請求を行った。横浜地方裁判所が再審請求を棄却し、これに対する…
事件番号: 昭和28(し)75 / 裁判年月日: 昭和28年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所は、裁判所法7条2号に基づき、法律が特に最高裁判所に対して抗告を申し立てることができる旨を定めている場合に限り裁判権を有する。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案であるが、当該抗告は刑訴応急措置法18条に規定する場合に該当せず、また、他に最高裁判所への申し立…
事件番号: 昭和33(す)195 / 裁判年月日: 昭和33年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所法7条にいう「訴訟法において特に定める抗告」とは、訴訟法上で特に最高裁判所の権限に属するものと定められた抗告のみを指し、高等裁判所の決定・命令に対する一般的な抗告は含まれない。 第1 事案の概要:本件は旧刑事訴訟法が適用される事件であり、抗告人は高等裁判所の決定に対して即時抗告を申し立てた。…
事件番号: 昭和44(し)28 / 裁判年月日: 昭和44年6月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下で提起された事件の再審請求について、高等裁判所がなした決定に対する即時抗告は認められず、憲法違反を理由とする特別抗告のみが可能である。 第1 事案の概要:窃盗被告事件について旧刑事訴訟法(大正11年法律第75号)の下で公訴が提起され、終結した。その後、当該事件について再審請求がなされ…