判旨
裁判所法7条にいう「訴訟法において特に定める抗告」とは、訴訟法上で特に最高裁判所の権限に属するものと定められた抗告のみを指し、高等裁判所の決定・命令に対する一般的な抗告は含まれない。
問題の所在(論点)
裁判所法7条に規定される「訴訟法において特に定める抗告」の意義、および高等裁判所の決定に対する最高裁判所への抗告の許容範囲が問題となった。
規範
裁判所法7条が規定する最高裁判所の権限としての「訴訟法において特に定める抗告」とは、日本国憲法の施行に伴う民事・刑事訴訟法の応急的措置に関する法律等において、特に最高裁判所の権限に属するものと限定して定められた抗告を指す。したがって、原決定における憲法判断の不当を理由とする場合などの特別の規定がある場合に限り、最高裁判所への抗告が許容される。
重要事実
本件は旧刑事訴訟法が適用される事件であり、抗告人は高等裁判所の決定に対して即時抗告を申し立てた。しかし、当該抗告の理由は、原決定が憲法に適合するか否かについての判断が不当であるという点(刑事訴訟法の応急的措置に関する法律18条所定の事由)を主張するものではなかった。
あてはめ
最高裁判所が裁判権を有する抗告は、法律により特に指定されたものに限られる。本件において、抗告人が主張する理由は原決定の憲法判断の不当を指摘するものではない。当時の応急的措置法18条は、憲法判断の不当を理由とする場合に限り最高裁判所への抗告を認めていたが、本件抗告は同条所定の要件を欠いている。また、裁判所法7条に基づき一般的に高等裁判所の決定に対する抗告を認める解釈も成立しない。
結論
本件即時抗告は、法律が特に認める適法な抗告理由を欠くため、棄却されるべきである。
実務上の射程
事件番号: 昭和28(し)75 / 裁判年月日: 昭和28年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所は、裁判所法7条2号に基づき、法律が特に最高裁判所に対して抗告を申し立てることができる旨を定めている場合に限り裁判権を有する。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案であるが、当該抗告は刑訴応急措置法18条に規定する場合に該当せず、また、他に最高裁判所への申し立…
最高裁判所の管轄権が限定的であることを示した判例であり、現行法下における特別抗告(刑訴法433条)の趣旨にも通じる。高等裁判所の決定に対して最高裁判所へ直接不服を申し立てるには、法律上の明確な根拠規定(特に憲法違反等)が必要であることを確認する際に用いる。
事件番号: 昭和34(す)54 / 裁判年月日: 昭和34年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所は、刑訴応急措置法18条1項に規定される憲法違反等の特別の理由がある場合に限り、下級裁判所の決定に対する抗告を受理する権限を有する。憲法上の判断を含まない再審請求棄却決定に対する抗告は、同項の要件を欠き不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は、原裁判所がなした再審請求棄却決定に対し、旧…
事件番号: 昭和40(し)17 / 裁判年月日: 昭和43年4月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所は、上告のほか訴訟法において特に定める抗告についてのみ裁判権を有するところ、旧法事件において右にいう抗告とは、刑訴応急措置法18条による抗告のみをいう。 第1 事案の概要:抗告人は、原裁判所がした再審請求棄却決定を不服として、旧刑訴法510条に基づき最高裁判所に対して即時抗告を申し立てた…
事件番号: 昭和32(す)356 / 裁判年月日: 昭和32年6月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法下で提起された事件の再審請求棄却決定に対し、最高裁判所への即時抗告は認められない。最高裁判所の裁判権は裁判所法7条により限定されており、法規に定めのない抗告を受理することはできない。 第1 事案の概要:抗告人は強盗殺人等の罪で有罪判決を受け、その判決が確定した。これに対し抗告人が再審請…
事件番号: 昭和34(す)325 / 裁判年月日: 昭和34年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審請求棄却決定に対する即時抗告を棄却した高等裁判所の決定に対し、最高裁判所へ上告または抗告を申し立てることは、法律に特別の規定がない限り不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、大正時代に有罪判決が確定した事件につき、昭和32年に再審請求を行った。横浜地方裁判所が再審請求を棄却し、これに対する…