判旨
高等裁判所がした決定に対し、刑事訴訟法428条2項に基づき異議の申立てをすることができる場合には、当該決定は同法433条1項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」に当たらない。
問題の所在(論点)
高等裁判所がした判決謄本交付請求の却下決定に対し、刑事訴訟法433条1項に基づく特別抗告を申し立てることができるか。当該決定が「この法律により不服を申し立てることができない決定」に該当するかが問題となる。
規範
刑事訴訟法433条1項に基づく特別抗告は、「この法律により不服を申し立てることができない決定」に対してのみ認められる。一方、同法428条2項は、高等裁判所がした決定のうち、即時抗告ができる旨の規定があるもの、または419条・420条の規定により抗告ができるものについては、その高等裁判所に異議の申立てをすることができると定めている。したがって、異議申立てという不服申立手段が用意されている場合には、特別抗告の対象とはならない。
重要事実
申立人は、広島高等裁判所松江支部に対し、恐喝等被告事件の第一審判決の謄本の交付を請求したが、同裁判所はこれを却下する決定(原決定)をした。申立人は、この原決定に不服があるとして、最高裁判所に対し特別抗告を申し立てた。
あてはめ
本件において、原決定は高等裁判所がした決定である。刑事訴訟法428条1項により抗告はできないものの、同条2項によれば、419条等の規定により抗告ができる決定については、その高等裁判所に対して「異議の申立て」をすることが可能である。本件の原決定は、この異議申立ての対象となることが明白である。そうすると、法律上、他に不服申立手段が存在するため、同法433条1項の要件を充足しない。
結論
本件特別抗告は不適法である。原決定に対しては、広島高等裁判所松江支部に対し異議の申立てをすべきである。
事件番号: 昭和30(し)45 / 裁判年月日: 昭和30年10月29日 / 結論: 棄却
本件証拠請求却下の決定のように訴訟手続に関し判決前にした決定は、刑訴四三三条一項にいう「この法律により不服を申し立てることができない決定」に当らない(昭和二九年(し)第三七号、同年一〇月八日第三小法廷決定、集第八巻一〇号一五八八頁)。
実務上の射程
高等裁判所の決定に対する不服申立構造を整理する上で重要である。高裁決定に対して直ちに特別抗告を検討するのではなく、まずは428条2項の異議申立ての可否を検討すべきという実務上の順序を示すものである。
事件番号: 昭和23(つ)32 / 裁判年月日: 昭和24年5月18日 / 結論: 棄却
しかし、最高裁判所に對しては、刑訴應急措置法第一八條のように、特に最高裁判所に抗告を申立てることを許された場合の外は、抗告をすることが許されないものであることは既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(つ)第七號、同年一二月八日第一小法廷決定)
事件番号: 昭和31(し)61 / 裁判年月日: 昭和31年12月13日 / 結論: 棄却
勾留理由開示の請求を却下する決定で高裁がしたものに対しては、たとい判決後にしたものであつても、刑訴四二八条二項により、その高等裁判所に通常の抗告に代る異議の申立をすることができるのである。従つて原判決は同四三三条にいう「この法律により不服を申立てることができない決定」にあたらないから、これに対し同条所定の特別抗告を申立…
事件番号: 昭和26(し)45 / 裁判年月日: 昭和26年10月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】旧刑事訴訟法が適用される事件について、刑事訴訟法施行法3条の2に基づき上告に関する現行法の規定が準用される場合であっても、特別抗告に関する現行法433条の規定は適用されない。また、応急措置法18条に基づく最高裁判所への抗告は、憲法違反を理由とする場合に限られ、判例違反を理由とすることはできない。 …
事件番号: 昭和44(し)19 / 裁判年月日: 昭和44年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人等による公訴棄却の申立ては、裁判所の職権発動を促すものにすぎず、これに対する却下決定は刑事訴訟法433条1項の特別抗告の対象とはならない。 第1 事案の概要:被告人側(あるいは抗告人)が、公訴棄却を求める申立てを行った。これに対し、裁判所が当該申立てを却下する旨の決定を下したため、申立人はこ…