原審が、検察官の控訴を容れ、第一審の未決勾留日数は五五日と認めしたがつて第一審判決が七〇日の未決通算をしたのは違法であるとしてこれを破棄の上、改めて右未決勾留二〇日を本刑に算入したことは正当で刑訴四〇二条に違反するものではない。
刑訴法第四〇二条に違反しない事例。
刑訴法402条,刑法21条
判旨
検察官が控訴した事件において、原判決が未決勾留日数を誤って過多に算入した違法を正した結果、被告人に不利益な変更が生じたとしても、刑法上適正な算入を行う限り、刑訴法402条の不利益変更禁止の原則には違反しない。
問題の所在(論点)
検察官が控訴した事件において、第一審判決が誤って算入した過多な未決勾留日数を、控訴審が是正して算入日数を減らすことが、刑事訴訟法402条(不利益変更禁止の原則)に違反するか。
規範
刑訴法402条の不利益変更禁止の原則は、被告人が控訴し、又は被告人のため若しくは被告人の利益のために控訴した事件についてのみ適用される。検察官が控訴した事件においては、原判決を破棄して被告人に不利益な判決を宣告することが許容される。また、未決勾留日数の算入(刑法21条)は、事実に基づき適正になされるべきものであり、過誤により過多に算入された日数を是正することは、適正な刑の執行を確保する観点から許容される。
重要事実
第一審判決は、被告人の未決勾留日数を55日と認めながら、誤って70日を本刑に算入した。これに対し検察官が控訴した。控訴審(原審)は、第一審判決の未決勾留日数の算入に違法があるとしてこれを破棄し、改めて適正な未決勾留日数(20日分を算入対象とする判断を含め、第一審の誤りを是正)を算入する判決を言い渡した。被告人側は、これが不利益変更禁止の原則に反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和24(れ)1809 / 裁判年月日: 昭和24年11月8日 / 結論: 棄却
舊刑訴法第四〇三條のいわゆる不利益變更禁止とは、判決主文の刑即ち判決の結果を原判決の結果に比して、重い刑を云渡すことを禁ずる趣旨であること、しばしば當裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一〇八號同年一一月八日第一小法廷判決、昭和二三年(れ)第八三八號同年一二月四日第二小法廷判決参照)に示されている通りである。しかるに本件第…
あてはめ
本件では、被告人のみならず検察官からも控訴がなされている。刑訴法402条は、被告人側のみが上訴した際に、被告人の上訴権を保障するために不利益な変更を禁じる趣旨である。したがって、検察官の控訴が介在する以上、同条の適用はない。また、第一審が事実と異なる日数(55日の未決勾留に対し70日の通算)を算入したことは明らかな違法であり、控訴審がこれを是正して適正な算入を行うことは、適正な手続により刑を確定させる職務に合致する。ゆえに、算入日数が結果的に減少し、被告人に実質的な不利益が生じたとしても、同条に違反するものではない。
結論
検察官の控訴に基づき、第一審の誤った未決勾留日数の算入を是正して算入日数を減じることは、刑訴法402条に違反しない。
実務上の射程
不利益変更禁止の原則の適用範囲が、被告人側のみが控訴した場合に限られることを再確認する事案である。答案上は、検察官控訴がある場合の不利益変更の可否、および未決勾留日数の算入誤りの是正が適法であることの根拠として用いることができる。
事件番号: 昭和33(あ)424 / 裁判年月日: 昭和33年7月1日 / 結論: 棄却
第一審判決に対し、検察官が控訴を申し立てた場合、その検察官が控訴趣意書を作成し、控訴裁判所に対応する検察庁の検察官がこれを同裁判所に提出することは訴訟法に違反しない。