被告人が控訴をし又は被告人のため控訴をした事件につき、控訴審が第一審の認定した事実よりも被告人に不利益な事実を認定しても、判決主文において第一審判決より重い刑を言い渡さない以上、刑訴四〇二条に違反しないと解すべきである。(昭和二三年一一月一八日第一小法廷判決刑集二巻一二号一六二六頁参照)
控訴審において第一審よりも不利益な犯罪事実を認定することと刑訴法第四〇二条。
刑法402条
判旨
控訴審において、被告人のみが控訴した事件につき、第一審が認定した事実よりも被告人に不利益な事実を認定したとしても、判決主文において第一審より重い刑を言い渡さない限り、不利益変更禁止の原則に反しない。
問題の所在(論点)
被告人が控訴した事件において、控訴審が第一審の認定よりも被告人に不利益な事実を認定することは、判決主文で第一審より重い刑を言い渡さない場合であっても、刑訴法402条(不利益変更禁止の原則)に違反するか。
規範
刑事訴訟法402条が規定する不利益変更禁止の原則の趣旨は、被告人が重い刑を科せられるおそれのために上訴を躊躇することを防ぐ点にある。したがって、同条の禁止する「不利益」とは、判決主文における「刑の重軽」を基準とするべきであり、判決の理由中で第一審よりも不利益な事実を認定すること自体は、直ちに同条に抵触するものではない。
重要事実
被告人が控訴(または被告人のために控訴)を提起した事件において、控訴審裁判所が、第一審判決が認定した事実よりも被告人にとって不利益となる事実を新たに認定した。もっとも、控訴審が言い渡した判決の主文における刑は、第一審判決が言い渡した刑よりも重いものではなかった。これに対し、被告人側は、不利益な事実認定そのものが刑訴法402条に違反する旨を主張して上告した。
あてはめ
本件において、控訴審は第一審よりも被告人に不利益な事実を認定している。しかし、不利益変更禁止の原則は判決主文の刑の重さを比較して判断されるべきものである。本件の判決主文を確認すると、第一審判決よりも重い刑を言い渡しているわけではない。そうであれば、理由中でいかに不利益な事実が認定されたとしても、被告人の法的地位が刑罰の面で第一審より悪化したとはいえず、上訴権の行使を不当に抑制するものとは認められない。
結論
控訴審が第一審よりも被告人に不利益な事実を認定しても、判決主文において第一審判決より重い刑を言い渡さない以上、刑訴法402条に違反しない。
実務上の射程
不利益変更禁止の対象が「刑の重軽」であることを明示した。被告人の訴訟活動を制約する「事実認定」や「適用法条」の変更であっても、最終的な刑が重くならなければ許容されるという実務上の確実な指針となる。もっとも、量刑事情として考慮される不利益事実の認定は、実質的に量刑を維持する理由となるため、弁護側としては防御権の行使が阻害されていないかという観点からの検討も併せて必要となる。
事件番号: 昭和30(あ)2244 / 裁判年月日: 昭和32年6月21日 / 結論: 破棄差戻
強姦致傷の公訴事実について第一審が、単なる傷害罪と認定処断したのに対し、控訴審が何ら自ら事実の取調をしないで第一審判決を事実誤認があるとして破棄し、訴訟記録並びに第一審で取り調べた証拠のみによつて、直ちに強姦致傷の事実を認定処断することは、刑訴第四〇〇条但書に違反するものである。
事件番号: 昭和53(あ)207 / 裁判年月日: 昭和53年10月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】検察官による量刑不当を理由とする控訴に基づき、控訴審が第一審より重い刑を言い渡すことは、憲法39条が禁止する二重の危険には抵触しない。 第1 事案の概要:第一審判決が言い渡された後、検察官がその量刑が不当に軽いことを理由として控訴を申し立てた。原審(控訴審)は検察官の主張を理由があるとして受け入れ…