第一審判決に対し、検察官が控訴を申し立てた場合、その検察官が控訴趣意書を作成し、控訴裁判所に対応する検察庁の検察官がこれを同裁判所に提出することは訴訟法に違反しない。
第一審判決に対し検査官が控訴を申し立てた場合の控訴趣意書の作成提出者。
刑訴法351条1項,刑訴法372条,刑訴法376条1項,刑訴規則236条1項
判旨
検察官が被告人に不利益な上訴を行い、原判決より重い刑を求めることは憲法39条に違反せず、また執行猶予を付さない判断が憲法14条所定の事由に基づかない限り同条に違反しない。
問題の所在(論点)
1. 検察官による被告人に不利益な上訴(重刑の請求)は、憲法39条が禁じる二重の危険に抵触するか。 2. 原審が執行猶予を付さなかったことは、憲法14条の平等原則に違反するか。 3. 検察庁間の事務分担に基づく控訴趣意書の提出は適法か。
規範
1. 検察官が下級審の有罪判決に対し、より重い刑を求めて上訴することは、憲法39条の二重処罰禁止の規定に違反しない。 2. 刑の執行を猶予しない理由が、人種、信条、性別、社会的身分又は門地等の事由による差別でない限り、憲法14条の法の下の平等に違反しない。 3. 控訴趣意書を控訴申立をした検察庁の検察官が作成し、これを控訴裁判所に対応する検察庁の検察官が提出することは、訴訟法上適法である。
重要事実
被告人に対し有罪判決が下されたが、検察官がこれを不服として上訴を提起した。被告人側は、検察官による重刑を求める上訴が憲法39条(二重の危険の禁止)に反すると主張。また、控訴趣意書の作成・提出主体に関する手続的違法や、執行猶予を付さなかった原判決が憲法14条(平等原則)に違反する旨を主張して上告した。
あてはめ
1. 憲法39条については、確立した大法廷判例(昭和25年9月27日)に照らし、検察官の上訴により被告人がより重い刑に処せられる可能性が生じることは、一連の訴訟手続の継続と解されるため、憲法違反には当たらない。 2. 憲法14条については、原判決が被告人の人種や身分等の属性を理由に差別した形跡はなく、諸般の事情を考慮して執行猶予を付さない判断をしたと認められる。 3. 控訴趣意書の手続については、作成主体と提出主体の検察官が異なっていたとしても、検察官同一体の原則等に基づき適法に作成・提出されたものといえる。
結論
検察官による被告人に不利益な上訴は合憲であり、諸般の事情に基づき執行猶予を付さない判断も、不当な差別に当たらない限り憲法に違反しない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟における「不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)」は被告人が控訴した場合の規定であり、検察官が上訴した場合には適用されないことを憲法的側面から再確認する判例。憲法14条違反の主張に対しては「属性による差別」の有無を基準とすることを明示しており、量刑の妥当性に関する争いを憲法問題にすり替える主張を遮断する際に引用できる。
事件番号: 昭和26(あ)3211 / 裁判年月日: 昭和28年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審の公判調書における訴訟手続の記載方法に関する原判決の判断に憲法違反はなく、裁判官が独立して職権を行使しなかった事実や証拠に基づかない事実認定があったとする主張は前提を欠き、棄却されるべきである。 第1 事案の概要:被告人が第一審の訴訟手続(刑事訴訟法291条2項の罪状認否および刑訴規則197…